Reception

目の前のルリさんが突然に立ち上がった。
「どうやら隣が営業を始めたわ」

そう言うと彼女は目で合図をして、僕は入ってきたドアの傍にある大きな窓に近付いた。

ここに入ってきた時には真っ暗だった敷地内の左の建物、今は右手に見えているがそこの建物の看板に灯りが点っているのがわずかに見えた。
はめ殺しの開かない窓に目一杯顔を張り付けて、看板の文字を読み取ろうと努力した。

「……グルーチョ……マルクス?」
「あなたの話した叔父さんの働いていた店と似た名前ね。偶然だろうけど」

ルリさんは再びソファに腰かけて僕に話の続きを促した。