火鉢で鈴虫を飼う

小学生の頃、鈴虫を飼うのが流行った。

下の姉が火鉢で飼うといいらしいという情報を聞きつけてきて、我が家でも早速押し入れの奥から古い火鉢を二つほど取り出した。

下の姉が友達からもらった数番の鈴虫を一生懸命育てていると、すぐに二つの火鉢一杯になるほどその数は増えた。

暗くなるとその透明な音色で鳴き出す、とてもよい趣味だと家族からも褒められたが、やはりやってしまった。

鈴虫の数が増えてきて外に逃げ出さないように餌をあげた後は火鉢に大きなガーゼをかけてゴムで蓋をしていたのだが、ある夜に限って観たいテレビがあったのか、その作業を忘れた。

翌日火鉢の中を覗くともぬけの殻、これはまずい、夜寝てると顔の上に落ちてきて家族は大パニックに陥るぞと慌てたが、結局奴らは縁の下に避難したようで、しばらくの間は縁の下から美しい音色が聞こえるようになった。