初めてのステーキ

小学校の友人じゅんぺい君のお父上からもお母様からも大変に気に入られ、ある週末お父上の運転する自家用車でサーカスを観に連れて行ってくれた。

確か「木下大サーカス」だったと思うが内容はあまり覚えていない。
触れ込みにあった「世界最小の象」が体調不良か何かで出演できなかった事、バイクで球の中を猛スピードで走り回るのを初めて観た事くらいしか記憶にない。

 

帰りの車内、運転席にはじゅんぺい君のお父上、助手席にはお母様、後部座席にはじゅんぺい君と自分、何だかお金持ちの家族の一員になれたみたいでとても幸せだった。
「せっかくだから夕ご飯を食べていきましょう」
そう言われて国道沿いにあるステーキハウスとサウナが併設した建物に入った。
店名には有名な喜劇俳優の名前が付いていたと思う。

そこで生まれて初めてビーフステーキというものをご馳走になった。
肉の脂がまるで違う食べ物のようで、これだけでご飯が食べられると感動した。

 

食事が終わるとお店の支配人がやってきて挨拶をした。
隣のサウナの支配人も兼務しているらしかった。

背筋がピンと伸びた外国のモデルのような佇まいに彫りの深い顔

あれ、この人……

記憶に間違いがなければ、ばあちゃんの弟、つまり大叔父にあたる人だった。

行方不明と聞いてたけど、こんな所にいたとは。