太宰の遠縁

高校2年の時に別のクラスに転校生がきた。

そいつは何を思ったか、バンドメンバーと授業をさぼってブランコに乗って遊んでいた高校裏の公園に一人でやって来て、話しかけてきた。

どうやら親しくなりたかったようだ。

 

話を聞くと太宰治の遠縁に当たるらしい。

つるむようになって麻雀の卓を囲んだ時、そいつはとにかく強気というか無謀な打牌で振り込んでばかりだったので、「さっすが破滅型の遠縁」と言ったら苦笑いをしていた。

 

公園での話に戻るが、自分たちはマイルドセブンやパチンコ屋の雀球の景品のショートホープを吸いながらブランコに乗っていたが、そいつはいきなり両切りの缶ピーを取り出して火を点けた。

そしておもむろに吸い出したが、すぐに「げほげほ」とむせ、気が付けば顔色は真っ白になっていた。

その時も「さっすが太宰の遠縁。フィルターなしの缶ピー吸うし、結核患者みたいに咳き込むし、やっぱり破滅型だ」と心の中で感動していた。

 

その後、そいつの方から距離を置くようになり、高校3年に上がる頃にはすっかり疎遠になったが、漏れ聞こえてくる噂を総合するとどうやらそいつは嘘つきだったようだ。

太宰の遠縁というのも嘘だったのかもしれない。いや、きっと嘘だったんだろう。

 

 

太宰治はこれしか読んだ事がない。