映画館への潜入

高校生になったら是非とも試したい事があった。

地元にある3館の映画館の内、日活、つまり当時ロマンポルノ専門だった映画館に潜入する事だった。

 

当日は一人で決行する事にした。

変にはしゃいだり、落ち込んだりせず、淡々と結果を受け止めようと思ったのもあるが、とにかく目立ちたくなかった。

その頃、好きというほどまではいってなかったが、気になっていたMJ学院の女の子の実家が映画館のすぐそばで商店を経営していたので、そこの人たちにばれるのが何よりも怖かった。

もちろんそれ以外にも知り合いのクリーニング屋やかかりつけの眼科もそこの近所にあったのでハードルはなかなかにして高かった。

 

高校は私服だったので授業を途中で抜け出して映画館に向かった。
知り合いに見つからないようにそっと券売の窓口に近付き、事更に低い声で「大人一枚」と告げた。

何の疑問もなく差し出されたチケット、何だ、こんなもんか

平日の午後の館内は客もまばらでできるだけ目立たぬように着席した。

 

結局、館内から外に出た時に誰かに出くわすんじゃないかという心配で映画の内容は全く頭に入ってこなかった。

 

朝日新聞デジタル

 120年以上前に芝居小屋として建てられ、昭和に映画館などとして使われた埼玉県川越市連雀町の「旧鶴川座」の取り壊しが今月…

ここがその日活専門映画館。今は旅籠になってるみたいだ。