Concierge

「やっと全館営業開始」

ルリさんはソファに腰掛けたまま満足そうに言った。

僕はさっきと同じように大きな窓に顔を近付けて外の様子を覗った。
レストラン「グルーチョ・マルクス」の隣にはサウナ「マルクス・ブラザーズ」と書かれた明るいサインが点灯していた。

更にその奥には大きなボーリングのピンが屋上に飾られ、その下には「コステロ・ボウル」という筆記体の英語が派手に色の変わるネオンサインで書かれていた。

ここに車を停めた時、こんなに多くの建物が存在していたっけ、僕が自問しているとルリさんが背後から声をかけた。

「ここはね、『アミューズメント・コンプレックス』、娯楽の複合施設なんだ。ここには何でも揃ってる」