選挙の運動員

1979年か1980年か定かではないが、衆議院総選挙の選挙事務所の運動員のバイトをした。

地元では知らない人がいない、常に全国でトップの得票数を誇る人気で、「政界の牛若丸」とか呼ばれてしょっちゅうテレビにも出ている候補だった。

 

仕事の内容は基本的にはポスティング。

毎日区域を決めてビラを配るのだが、大規模分譲や団地区域で投函していると、どこまで配ったかが曖昧になってくる。

まだ暑い時期だったか、これから暑くなる時期だったか覚えていないが、そうやって迷子になるのと、早いとこ喫茶店でアイスコーヒーを飲みたいのとが重なって、残ったビラをまとめて数軒の家にねじ込んで帰るという荒業に出る事が多かった。

 

大抵は何も起こらないが、ビラをまとめてねじ込んだ家が信条を異にする、特に宗教系や社会主義系の家庭だった場合、事務所に猛烈なクレームが来る事があった。

こっちはまとめて処分したのがばれたのかとヒヤヒヤだったが、事務所側も後ろめたい事をさせているからなのか、怒られる事はなかった。

それに味を占めて選挙も終盤になると朝、事務所に集合 → もらったビラを目的地でまとめて配ってポスティング完了 → 喫茶店で時間をつぶす → 事務所で昼食 → ポスティング → 喫茶店 → 事務所に戻って日当精算
という流れが完全に確立されてしまった。

 

事務所に来られたお偉いさんの車の移動もやった。

クラウンのような高級車を運転した事がなかったので、サイドブレーキの位置がわからずに10分くらい悪戦苦闘した。

 

結局その候補はいつも通り全国一位の得票数で楽々当選した。

これはすごいボーナス出るかもと思っていたが何も出なかった。

新党でお金がなかったんだそうだ。