ゲーム・ファンタジア

高校生の頃、一番好きな場所は新宿だった。

新宿には何もかもがあったので、他の街、例えば渋谷に行く必要性は全く感じなかった。

赤坂、六本木に至っては自分の生活とは無縁の地だった。

一度だけガールフレンドと渋谷から青山通りを通って六本木まで歩いた事があったが、青山は道が広すぎるという印象しか持たなかった。

 

でも一番大事な街は池袋だった。
だってそこに着かないと何も始まらなかったから。

 

ご存知のように池袋は西武のある東口と東武のある西口で雰囲気が大きく異る。
サンシャインができる前の東口も垢抜けなかったが、西口はもっとだった。

歩いているだけで因縁を付けられるという伝説のあったロマンス通り中程の左手にロサ会館がある。

当時のロサ会館にはボーリング場のレーンをそのまま使ってるんじゃないかという噂の「アダムスアップル」という巨大ディスコがあったが、確かそこよりも下の階に「ゲーム・ファンタジア」があって、高校の友人がそこに連れていってくれた。

 

ゲーム・ファンタジアはゲームセンターだったが、まだスペース・インベーダーが世に出る前の話で、取扱っているゲームはコインゲーム中心、しかも現在のような競馬やコインタワーではなく「ビンゴ・ピンボール」ばかりが置いてあった。
多分他のフロアのファンタジアに行けば違ったゲームもあったのだろうが、友人が連れていってくれたのはビンゴ・ピンボール専門のフロアだったようだ。

ビンゴ・ピンボールはピンボールのように決められた数の玉を打って、ビンゴを完成させるとコインが還ってくるのが基本だったが、ベットするコイン数を増やす事によってエキストラ・ボールをゲットできたり、盤面を動かしてラインを揃えるオプションを手に入れたりができた。
もちろん玉を打ってラインを揃えるための技術は必要だが、友人に言わせるとこのゲームの醍醐味は最小限の追加コインで最大限のリターンを得るための好条件を引き出す事なんだそうだ。

結局何も理解できないままロサを後にして、この一回だけでビンゴ・ピンボールに触れる機会はなくなってしまった。
今もどこかに筐体は残っているのだろうか?