助平ジジイ The Three Degrees – Dirty Ol’ Man

地元の百貨店に石津謙介のVANを扱う一角ができたが、ちょっと東京に足を伸ばせば欲しいものを買う事が可能な典型的ベッドタウンだったので、VANができた所でオシャレな人間は相手にせず、そうでない人間は有難味がわからないのか近寄らず、いつでも閑散としていた。

そんな周囲から浮いたこじゃれたVANコーナーにコンセプトを大事にするためにわざわざ設置したと思われる一台のジュークボックスが置いてあった。

 

ある日中学校の同級生とたまたまVANコーナーの傍を通ってそのジュークボックスを発見した。
それまでジュークボックスなんてボーリング場でしか見かけた事がなかったし、大抵その周りではコーラを瓶からがぶ飲みする怖いお兄さんお姉さんがたむろしていたので、中身をじっくり見るチャンスなどなかった。

「なあ、見てみようぜ」

どちらからともなく声を掛け合い、VANコーナーのスタッフに気付かれないように機械に近付いた。

ガラスの奥には手書きで曲名と番号の書かれた札がきれいに並んでいて、その上にはアルファベットと数字のボタンが付いていた。

「せっかくだから掛けてみよう。1曲20円だし」
「うん、どれにしようかな」

 

今週のベストテンで知ったドーンやギルバート・オサリバンの名前が書いてあったが、この場で聴くのは軟弱なようで気が引けた。
「どれにすんだよ」
「じゃあ、これ」

選んだのは「荒野のならず者」という曲だった。

♪ Dirty ol’ man

曲が流れ出すと、この場にふさわしい選曲だったなと妙に誇らしげな気持ちになった。

 

The Three Degrees | Dirty Ol’ Man

 

家に帰ってから音大生だった上の姉にこの件を話した。
「Dirty ol’ man って「助平ジジイ」って意味よ」

少し大人になった一日だった。

 

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