ニッキ紙

遺族年金をたんまりもらっているばあちゃんにたかっていたせいで、ほぼ毎日駄菓子屋に行っていた。
近所には三軒の駄菓子屋があって、一軒は少年マガジンを購入するための店、一軒はもんじ焼の台が置いてある店、もう一軒は同級生の女の子の母親がやっている店だった。

ほとんどの駄菓子はこの三軒で買って経験済みだったが、ニッキ紙は未体験だった。
ある日、同級生の女の子の店で発見したので買ってみた。
少し横長(縦長?)の紙に赤堂鈴之助っぽい絵が書いてあって、鼻を近づけるとニッキの香りがする。

さて、これをどうするんだ。
食べられるのかな、無理だろ、だって紙だぜ。
作法がわからず、とりあえずその紙をべろんべろん舐め回しながら家まで帰ると、ちょうど電電公社の交換手のパートから帰ってきていた母が物凄い剣幕で怒鳴った。
「何、不潔な事してるの。二度と買っちゃいけません」

不衛生。
確かに物凄く不衛生だ。
べろんべろんに舐め倒した後だったので紙も手もでろでろにふやけていた。

結局、その一回でニッキ紙禁止令が出てしまったため、自分の味わい方が正しかったのかどうかもわからない。

 

出典:まんだらけオークション|高野製菓 肉桂紙 (ニッキ紙)