カラーテレビとのニアミス

どんな物にも寿命がある。
1969年、ビクターの白黒テレビは限界を迎えようとしていた。

 

当時は量販店ではなく町の電器屋さんが様々な家電を手配し、修理してくれた時代だった。
我が家にも東北から集団就職で上京して、頑張って独立して奥さんと二人で小さな電器屋を開業したてという好青年が足繁く通ってきていた。
(まるで「三丁目の夕日」のようだが、嘘つきだった父の話なので集団就職の下りは嘘かもしれない)

 

好青年は白黒テレビを観るとニコニコしながら言った。

「時代はカラーなんでカラーに変えちゃいますか。でも高い買い物だし、まずはカラーテレビってどんなものか知るために、しばらくお試しで使ってみません?」

そんな訳でお試し、サンヨーのカラーテレビが我が家にやってきた。

 

ところがテレビが来て間もなく虫垂炎、いわゆる盲腸で入院する事になった。
しかも院内感染してしまい、入院が伸びて、ガリガリに痩せた。

ようやく退院となった日に急いで家の戸を開けると

いつものビクター白黒テレビが鎮座して帰りを待っていた。