青山オフィスでコピーを取っていると、大学のOBの先輩が顔を出し、バイト代を出す予定がなかった事について言い訳を始めた。
「いや、どっちみち4月になれば正式にアサインするつもりだったから、その準備というかね」
「あの、4月に入社したら、3か月都内で研修を受けて、その後アメリカの本社で3週間のトレーニングを受けて、海外で夏休みを取ってよいと総務から言われましたけど」
「ははは、それは普通の社員の場合だよ。君は特別、即戦力だからそんな研修なんて必要ない」
「それに僕は元々LAの監査部門に行きたいんで」
「まだそんなとんちんかんな事言ってんのか。国も違うし、部門も違う、そんなの無理に決まってるだろ」
それだけ言うと先輩は出ていってしまった。
コピー室の会話が丸聞こえだったセクレタリプールから親しくなったセクレタリの人がやってきて
「とりあえず東京で頑張れば。きっといい事もあるよ」
とだけ言ってくれた。
すっきりしないまま帰り際にオフィスの入り口にある大きな世界地図を見た。
そこにはどこのプロジェクトにアサインされているかが一目でわかるように全社員150名余りの名前が英語でボードに打たれていた。
自分ももうすぐここに名前が出るんだ、そう思ったらそれほど嫌な気はしなかった。
P-Funk All Stars | Copy Cat(1983)