就職も決まり、残りの作業は修士論文だけだった。
1986年の正月は家に缶詰だ、と思っていた所、地元の親友N、医学部に通うT、それにメイクアップアーティストのHが「正月どこか行こうよー」と言ってきた。
「えっ、論文あるからだめ」と答えたが、「いいじゃん、現地でやりなよ。邪魔しないから」となり、強引に伊豆の民宿に連れていかれた。
邪魔しないとは言われたものの、なかなか論文を書く時間は取れなかった。
食事も終わり、夜は何をしようかなとなっている時にはたと思い付いた。
「ねえ、皆で熱海の街に行ってきなよ。ここからなら車で30分くらいだし」
「でも熱海で何すればいいんだよ」
「確かストリップとかあったと思うから、楽しいかもよ」
「うぉー、それだ。じゃあ行ってくる」
やった、ようやくこれで論文に集中できる。
論文に集中して数時間後、Nたちが戻った。
「どうだった?」
論文用紙に目を落としたまま尋ねたが、何も答えない。
後で聞いた所、とんでもない老女のダンサーが出てきて、とても書き表せない人間離れした大技を披露し、唯一の観客だったNたちはチップをむしり取られたそうだ。
腹がよじれるほど笑った。
The Bar-Kays | Freakshow on the Dance Floor(1984)