我が家の料理を取り仕切っていたばあちゃんは伝統的な日本の食事を作るのには長けていたが、新しいものや横文字にはてんで疎かった。
そのせいか姉や自分たちの無茶な要求をかなり聞いてくれたし、そうやって一度導入したものはほとんど変えない頑固さもあった。
ある日、父親か母親が勤め先からライス型を携えて帰宅した。
子供たちは大喜びで、ばあちゃんにお子様ランチを要求し、ばあちゃんはそれに応えるべく、コロッケやマカロニサラダといったありったけの洋食っぽいものを大皿に盛り、そこにライス型に詰めたコメをよそってくれた。
姉弟皆で「わーい、お子様ランチだ。ランチだ」と喜んでいたら、いつの間にか大皿におかずを並べ、そこに型に詰めたご飯を盛る料理を「ランチ」と呼ぶ習慣となった。
夜なのに「今夜はランチだよ」、「わーい」という奇妙な会話だった。
Quincy Jones | Stuff Like That(1978)