中学校の頃、地元のデパートに青山のパン屋「ドンク」がオープンした。
フランスパンを生まれて初めて目にしたので大興奮だった。
当時、土曜日は午前中だけ授業があって、その後部活や学校に残る人間は弁当を食べるなり、一旦家に帰るなり、食事をするのが普通だった。
上の姉が買っていた「non-no」か何かの、「パリジャンはフランスパンをランチにする」という記事を目にして「よし、これだ」と思い立ち、金曜日にドンクに行ってなけなしの小遣いをはたいてフランスパン、今で言うバゲットを一本買った。
翌日、唖然とする家族に「弁当はこれだから」と言い放ち、マディソンバッグにフランスパンを突っ込んだまま登校した。
昼食の時間となり、教室で颯爽とマディソンバッグからフランスパンを取り出すと、目ざとい女子たちが「フランスパン持ってきたの」、「おっしゃれー」とか早くも言い出していた。
いい気になって最初の一口をガブリ、
あれ、フランスパンって給食のコッペパンの外側が硬いだけで、味がしない。給食じゃないからマーガリンもないし。
それに食べてると口の中の水分を持ってかれる。給食の牛乳ないし、水道まで水飲みに行くのもカッコ悪いし
結局、何も付けず、何も飲まず、死にそうになりながらフランスパン一本完食した。
二度とパリジャンなんて目指すか、そう思った。
Michel Polnareff | Love Me, Please Love Me