流行の伝播速度

今のようにネットとかなかった昭和40年代、テレビ起源ではない子供たちの流行はどうやって、どのくらいの時間をかけて全国に広まったのか興味がある。
口裂け女の時は半年くらいで全国に広まって、その結果テレビが取り扱ったようなので、そこそこのスピードなのかもしれない。

当時の自分の周囲の状況で考えると

未知の世界 → 上級生の兄姉、或いは別の学校 → 上級生 → クラスメート → 自分

みたいな感じに伝わっていたような気がする。

 

1968年に酒蓋が爆発的に流行った。
流行の伝播の流れで言えば自分は小学校低学年で末端にいたから、実際はその半年前くらいから流行していたんだと思う。

全国的な流行だったかどうかわからないが、ネットを見る限りはこの流行を知っている人は多いようだ。

 

自分も含めた家族が誰一人として酒を飲まないためよくわかってないが、日本酒の一升瓶はワインと同じようにコルクの栓で塞がれている。
「T」という形の縦の棒がコルク部分で、この部分を切って平らな蓋だけを残すというものだった。

で、残った酒蓋でどうやって遊ぶかというとこれが又よくわからなかった。
多分、メンコと同じで相手の蓋をどうにかしてひっくり返せば勝ちなのだろうが、ほとんどそうやって遊んだ事はなかった。

結局、自分の周囲にやってきた時の酒蓋の流行はコレクションが主で、如何に珍しい酒蓋を収集できるかがポイントだった。

 

ただコレクションと言っても酒を飲まない我が家は不利だった。
家に日本酒がなかったのもあるが、知り合いの酒屋さんがいないため不要な蓋を融通してくれる機会もなかった。

これはいけない。

そう考えて放課後はほぼ毎日、酒屋の野積みの倉庫に無断潜入していた。
さすがに中身の入っている一升瓶の蓋を抜き取るのがまずいのは理解できていたので、下に落ちている酒蓋を物色した。

そんな暮らしを一月ほど続ける事によって、他人と遜色ない量の酒蓋を収集する事ができたが、酒屋の店員やご主人に見つかって説教される事も多かった。

 

そうこうしている内にあっという間にブームは過ぎ去り、不要になった大量の酒蓋は金属製のせんべいの空き缶に入れられたまま、縁の下に隠された。
これはお決まりパターンで家の中に置いておくと捨てられてしまうので、色々なものが縁の下に放置されたままだった。
メンコ、ベーゴマ、ガチャガチャで出た謎の怪獣……そうやって皆、忘却の彼方に消え去っていった。