たった一回きりのサーフィンに行く前の夜の出来事だった。
バイトが終わって先輩のアパートで仮眠を取る前に遅い夕食を取った頃にはもう日付が変わっていた。
先輩の愛車ビートルに乗ってアパートに行く途中、高架の道路に差し掛かった。
すると前方、高架の一番高くなっている場所に何か白いものが見えた。
近付くと、それが白い寝間着、パジャマかネグリジェかわからないが、を着た長い黒髪の女性だというのがわかった。
女性は裸足で側道をふらふらと歩いていた。
初めは先輩も「ひゃっほー、女だ、女だ」と喜んでいたが、近くになるにつれ口数が少なくなり、最終的に追い越す時には黙ったままでクルマのスピードを上げた。
追い越した後も先輩はバックミラーを凝視し、自分も振り返って後方を見つめていたが、相変わらず女性はふらふらと歩き続けていた。
あれは一体何だったのだろう?
The Police | Spirits in the Material World(1981)