くずとテリー The Style Council – My Ever Changing Moods

大学院で初めて自分の将来の進路を真剣に考えるようになったが、学部生の時はどうだったかを思い起こすと信じられない「くず」な行動を繰り返していた。

四年で卒業できないのが明らかになった時に、税理士資格を取って家業を継ぐと宣言し、夏休み後から簿記学校に行き出した。

神田の三省堂にあった有名なアルファベット3文字の学校だった。

 

毎週土、日の講座で簿記、財務諸表論、税法色々の内、王道の法人税、所得税と後一つを選んだが、何しろ講師手作りのハンドアウトも含めて教材が膨大だった。

とても学校とは呼べないピリピリした雰囲気で、初日にほとんどの生徒が左手で電卓を叩きながら右手で回答用紙に書き込んでいくという大技を行うのを目の当たりにしてかなりへこんだ。

「これは一回でも休んだら脱落するぞ」と思い、「繰延割賦売掛金」という謎の勘定科目に苦労しながらも頑張って毎週出席した。

 

そうして二月ほど経った所で落とし穴が待ち構えていた。

球場の警備員のバイトをしていた関係もあり、そこの球団に対して愛着があったのだが、その球団が日本シリーズで3連敗から劇的に持ち直し、いよいよ優勝決定という最終戦の日だった。

神田駿河台下に着いて講座の開始時間を待ったが、何だか落ち着かないのですずらん通りにあるパチンコ屋に飛び込んで日本シリーズの試合経過を一瞬だけ確認する事にしたが、それが甘かった。

結局試合終了まで実況を聞きながらパチンコを打ち、外に出た時にはすでに号外が配られていて「MVPはテリー」とでかでかと出ていた。

 

号外を持ったまま神田駿河台下の交差点に立ち、「一体自分は何をしてるんだろう」と情けなくなり、それ以来野球を観る事があまりなくなった。

次の週に講座に行ったが、案の定もう付いていけなくなっていて、以後二度と通学する事はなかった。

 

The Style Council | My Ever Changing Moods(1984)