子供の頃、裏通りの大イチョウの樹のそばに長屋があり、そこの住人の大工の家のお富さんと呼ばれるお兄さんが皆に輪ゴム銃を作ってくれた。
よくあった割り箸鉄砲ではなく、大工修行中の息子が端材を使って作った本格的な銃だったので皆、お富さんに一目置いていた。
一番ラッキーだった近所のお兄ちゃんは連射式のマシンガンみたいな形の銃をプレゼントしてもらって、とても羨ましかったのを覚えている。
当時は大きなイチョウの樹の根元にあった長屋、開けっ放しで誰でも出入りできたお富さんの家、その隣の朝から太鼓をでんでん叩いている家、そういうのが昔っぽいなと思っていたが、今になると輪ゴム銃や近所のお兄さんたちとの交流、自分を含めた全てが昔っぽいんだなと感じる。