高校の友人S君は大学生の頃に自分の幼馴染と付き合っていた時期があったのでたまに3人で出かけたりした。
夏休みにもう一人誘って4人で軽井沢のペンションでテニスをしようという事になり、S君の運転で出かけた。
軽井沢で思う存分テニスをし、いつも通りそばを食い、ジャムを買い、S君の発案で南軽井沢にある人造湖のその名もレマン湖の近くにある喫茶店でカレースパゲティを食べたりして楽しく過ごした。
帰りは運転を代ろうかと言うと、S君はにやりと笑って「冗談言うなよ。楽しみを奪わないでくれ」と言い放ち、帰路に着いた。
当時は関越自動車道は前橋までしか開通してなかったので碓氷バイパスを使うのだろうと思っていたら、S君はそちらには行かなかった。
「えっ、どうやって帰るの?」
「和美峠に決まってんじゃん」
走り屋ではない自分には正確な場所がよくわからなかったが、そこは舗装されていない砂利道で車のすれ違いもぎりぎりなくらいの道幅だった。
S君は嬉々としてカーブに突っ込み、車をドリフトさせながら峠をひたすら降りていった。
同乗していた自分ともう一人の友人はぐったりしながら車のグリップにつかまっていたが、唯一助手席に座るS君の彼女、自分の幼馴染だけは平然とした顔付きだった。
きっと日常だったんだろうな。
Suzi Quatro | Devil Gate Drive