自転車で30分も走れば荒川の河川敷に行けた。
秋になるとバッタを取りに橋沿いの河川敷まで自転車を走らせるのが常だった。
おそらくイメージできないだろうが、ここでいうバッタ取りは普通に野原でバッタを探して「見ぃーつけた」という雰囲気のものではなかった。
一歩歩けば草の中から各種のバッタたちが無限に湧き出す。トノサマバッタもいれば、ショウリョウバッタもクツワムシもいたが、その群れに飲み込まれながら、気が付けば体にくっついてきたり、手の中に残っていたバッタをただ籠の中に入れるというものだった。
なので十歩も歩けば虫かごがほぼ一杯になる極めて効率的な作業だった。
ある秋はまれに見るバッタの大量発生年だった。
その頃は普通に歩きながらバッタの渦に飲み込まれるのにも飽きて、わざと走って誰が一番大きなバッタの渦を作れるかという遊びをやったりしていた。
ついつい湧き上がるバッタの渦に気を取られて足元がお留守になっていた。
その河川敷では牛を放牧していて、至る所に牛がフンをしていたのだが、やってしまった。
ぐしゃにゅる
靴を通しても伝わる感覚、こわごわ足元を見ると子供だった自分の小さな左足は完全に牛のふんの中に埋まっていた。