新宿の断片的な思い出 1

自動車の運転を始める前、高校生の頃までは路線駅の結び付きでしか地理が理解できていなかった。

つまり、池袋から目白、高田馬場、新大久保を経由してしか新宿には着けないと思っていたし、新宿から渋谷も代々木、原宿経由しかありえないと信じていた。

 

初めて新宿から代々木まで歩いたのは中学生の頃だった。

きっかけは同級生H君のお父様が「鉄道病院」に入院した事だった。

鉄道病院?

何故かその名の響きに誘われてH君の付き添いでお見舞いに行く事にした。

 

新宿駅南口を出て小田急線の踏切を渡ると右手に「鉄道病院」があった。

「何だか珍しい奴も一緒だな」

手ぶらでベッド脇に立つ自分をお父様は優しく迎えてくれた。

 

 

病院を出てさらにその先に歩くと「代々木ゼミナール」や「早稲田予備校」を筆頭とした予備校街が駅まで続いていた。

お兄さんやお姉さんがひっきりなしに建物を出入りしている

いつか自分もこの群れの中に加わるのだろうか

そんな事を思いながら歩いているとすぐに代々木駅に着いた。

 

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ああ、新宿と代々木の関係ってこうなってるんだ

それまで駅と駅、点でしかつながっていなかった場所が面と面でつながったような気がした。

「スプラトゥーン」で場所を塗り切ったような感じと言えばいいのか 「スプラトゥーン」やった事ないけど。