高校で写真部に入ってわかった事。
写真には金がかかる
カメラはもとより、アクセサリ、フィルム、印画紙、フレーム、現像液や定着液は部費から出たけれど、個人負担額はなかなかのものだった。
これで撮影旅行にでも出かけようものなら、毎日すうどんをすする生活で、ましてやカラー写真にまで手を伸ばせば、さらにお高いフィルムと印画紙を購入せねばならず、たちまち破産だった。
そこで先輩から言われたのが、「新宿にあるヨドバシに行け」だった。
何でもそこに行けば、フィルムも長いロールで売っているし、印画紙も安いらしかった。
先輩は口を酸っぱくして何度も言った。
「いいか。新宿西口にあるのが『ヨドバシカメラ』だぞ。東口にあるのは『さくらや』だからな」
新宿東口は何となく土地勘があったが、西口にはそれまで行く機会がなかった。
高層ビル群の足元の整備されていない場所にいきなりカメラ屋が建っているんじゃないかと想像していたらその通りだった。
戦後の闇市のままのような通りに店が軒を連ね、そこでひときわ賑やかな店内放送を流しているのが数軒ある「ヨドバシカメラ」だった。
その後すぐに「ヨドバシ」が東口の「さくらや」の隣にできたので西口店に寄る事はなくなったが、あれは見間違いだったのだろうか。