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4 孤独の王
デズモンドたちと別れたロクたちは定期巡航の最後の目的地、《機械の星》に向かった。
シップの中でロクは黙り込んで考えた。
本当にメサイアを外の世界に連れ出していいのだろうか。
自分にやましい点はなかったが、外の世界には色々な人がいる。そういった人物の言動が彼に悪い判断材料を与えなければいいのだが。
いや、彼はあの星で誰かによって造られ、その星を滅ぼすに至るまでに既に数多くの愚かな人間を見てきている。外の世界に出てそんな事態に遭遇したとしても、彼の思考には何ら影響を与えないはずだ。
そもそも彼は外に出たくないと言うかもしれない。彼の気持ちを無視して話を進めるのはよくない――
ここまで考えてロクはおかしくて笑い出しそうになった。
メサイアを『彼』と呼ぶ時点で、人間扱いしているという証拠だ。
いつも通り、普通に接すればいいのだ。
「父さんはいつでもメサイアに会う時は嬉しそう。うらやましいなあ」
隣のセカイがぽつりと言った。
セカイよ。父の方こそお前をうらやましく思う。
お前のその若さ、先ほど《蟻塚の星》で見たような性別の消滅、そして人間と機械が普通に共存する世界が、物心ついた時にデファクトとしてすでに存在していれば、何の疑問も抱かず、受け入れる事ができるのだ。
未来はお前たち、次の世代にかかっている――
「さあ、着くぞ。会えるといいな」
いつもの広場に向かうとすでにメサイアがそこにいた。
メサイアはロクたちの姿を見るなり、近付いてきた。
「ああ、良かった。ぼくを選んでくれないんじゃないかってやきもきしてたんだ」
「何の事だい?」
「とぼけなくていいよ。今、世界は大変なんだろ。ご自慢のシステムがダウンした。そして再起動した時には君たちに牙を向く。そう予想して君はぼくの下に助けを求めに来た」
「その通りだよ、メサイア。助けてほしい」
「ここにいれば安全だよ。いっそこっちに引っ越せば?」
「そんなつれない事を言わないで」
「――ロク、セカイ。この場所にいて全ての人を救うのは無理だ。それはつまり、ぼくを外の世界に連れ出さないといけない事を意味している。君たちにその覚悟があるのかい?」
「覚悟?そんなものは必要ないさ。普通に君を連れて他所の星に行って、ORPHANと戦ってもらう。そして普通に帰ってくる。君がお望みなら、どこかで祝勝会をやってもいいし、帰りに観光をしたって構わない」
「驚いた――ぼくは銀河を滅ぼすかもしれない存在だよ。外に連れ出す事がどんなに危険か、理解できているのかな。その強気の根拠は何だい?」
「友達を信じないでどうするんだ。たとえ君が銀河を滅ぼしたって、ぼくはちっとも後悔しないよ」
「本当の事を言うとね、行く気満々で色々とチューンアップしてたんだよ。でも君たちが迷ってたら止めるつもりだった」
「じゃあ行こう」
「わかった。君のポッドにぼくの座るスペースはあるかな。なければ分解して運んでくれても結構だよ」
「笑えないジョークだぞ、メサイア」
「ごめん」
「冗談だよ。で、どこに向かえばいい?」
「対決の前に行ってみたい場所があるんだけどいいかな?」
「もちろん。どこだい?」
「君の生まれ故郷さ」
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