目次
4 失せ物
翌朝、サフィはワンガミラたちに礼を言い、《幻惑の星》を後にした。
教えられた通りに《祈りの星》とは逆の方角に進むと、やがて一際大きな星を含む星団を発見した。
青と茶が交じったその大きな星に向かった。惑星は全部で四つあるようだった。
大気圏に突入すると砂漠、海、ジャングル、そしてようやく緑の大地が見えたのでそこに着陸した。
サフィは砂漠の一角のオアシスのような町の街路に立った。
「ずいぶんと大きな町だが、ここが《享楽の星》か」
町の両脇に並ぶ露店と行き交う行商人たちを見ながら、町に住んでいると思しき一人の男を捕まえて星の名を尋ねると、《享楽の星》のチオニという答えが返ってきたので一旦シップに戻り、滞在の準備を始めた。
町の外の砂漠に停めたシップの中である事に気付いた。一人になってからずっと感じていた、何者かが潜む気配が消えていた。
操縦席の周りを見回し、『焔の剣』もなくなっているのに気付いた。
「シップに隠れていた何者かが剣を持ち去ったな」
サフィは頭をかきながら再びチオニの町に戻った。
チオニの町は東西南北に長い道路が伸びていた。西から町に入り、町の中心部まで剣を佩いた人間が通らなかったか尋ねながら歩いた。そこから南に向かい、同じように町のはずれまで歩いた。
再び町の中心に戻り、今度は東の端まで歩いた。東のはずれは西や南とは異なり、頑丈な石の壁で覆われた展望台のような広場になっていた。不思議に思い、広場のベンチで休憩していると、突然声をかける者があった。
「そこの方。失せ物でもされたか」
サフィは声の方を振り返り、息を呑んだ。
「……ワンガミラ?」
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