これまでの人生で何人もの命を救った。
自分にしかない知恵と力、それがあれば人を救うのは簡単だと思い上がっていた。
ところが親しい者を救えなかった深い後悔を、それを三度も味わうとは思いもしなかった。
一人目は戦争で死んだ。自分には彼を救えなかった。
二人目はその息子、絶対に手放してはいけないと誓ったはずなのに空襲で生き別れになった。
そして三人目、自分の息子を失くした。自分は彼のために父親らしい事を何一つしてやれなかった。
今、自分が手を引いているのは彼の息子、つまりは自分の孫だ。
この子だけは何があっても守らなくてはならない。
それが唯一の贖罪だ。
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