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20XX.7.12 性質(たち)の悪いゲーム
今までになくすがすがしい気持ちで『クロニクル』を集中して読んだ。気が付けば長い長いと思っていたチャプター4の後半まできている。
このペースが続けられるのであれば今月中にエピソード6を読み終えるかもしれない。
(追記)
夜、何かを感じて目が覚めた。
あの時と同じだ。暗闇でじっと身を潜めているのは、かつて人の器に入っていたもの。
瞬時に何が起こったか(いや、誰がこうなったか)を悟ったけれども、ショックで声が出なかった。
ようやくか細い声でシゲさんですか、と尋ねた。
「ギリギリセーフだったわよね。もうちょっと遅かったら、話もできなかったし、資料を渡すのだってできなかった」
ぼくが会いに行ったからこんな事になったんですか――
「ばかねえ。寿命よ、寿命。それともあんた、自分を死神か何かだとでも思ってるの?」
でも前にも同じような事があって――
「わかってないわねえ。あんたはすでに死んだ人間と話ができる。その凄さに気付きなさい。こうやってあんたと話せるから安心して逝けるのよ」
……
「いやあねえ、泣かないでよ。お礼を言いに来たのにこっちまで悲しくなるじゃないの。そうだわ、約束して。事実を取り戻したら、あたし、どんな人生送ってるかわかんないけど会いに来てよ。絶対よ。じゃあね」
どうしていいかわからなかった。
これじゃあまるでババ抜き、いやもっと性質(たち)の悪いゲームだ。手札を場に置くと、すぐに片づけられてしまう。
もうこれ以上続ける自信がなくなった。