リーバルンは王となるべくして生まれた。
リーバルンの父アーゴは、地方の一有力者に過ぎなかった両親を幼くして亡くし、生後五千昼夜式典の前に(銀河連邦暦でおよそ十五歳、この星では年という概念がなかった)後を継いだ。英雄プトラゲーニョという良き参謀の指導鞭撻を受け、六千の夜を数える頃にその名声が一躍轟く事となった。
水に棲む者との間で領土を巡るいざこざが起こった時、単身『白花の海』の海底宮に乗り込み、ワンクラール王に会談を申し込んだ。その席上、緩衝地帯の設置を提案し、これを快諾したワンクラール王に加えて、地に潜る者の王、ネボリンドにも声をかけ、ホーケンス非武装地帯設置に奔走した。
アーゴはこの英雄的行為により空を翔る者の初代の統一王に推挙された。
八千日にしてメリテルと結婚し、長子リーバルンを授かったが、リーバルンの命と引き換えにメリテルは世を去った。
リーバルンは父譲りの勇猛さに加えて母から引き継いだ慈愛の精神も持ち合わせていた。過激な思想の持ち主はリーバルンこそ、三界を統一し、空を翔る者の覇権を確立する人間だと期待した。一方平和を望む人々もリーバルンが三界の長年の諍いを解消してくれる切り札だと考えた。
父アーゴはそんなリーバルンに期待をし、時にはその優しすぎる心根に不安を覚えつつも帝王学を教え込んでいった。
目次
1.1.2.1. 比翼山地
1.1.2.2. 希望の光
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