2 ジウランのエピローグ

2 ビーチハウス

 JRの駅で降り、ビーチハウスに向かったがじいちゃんは不在だった。
 海岸に出ると砂浜にデッキチェアとパラソルが見えたので、そちらの方に走っていった。

「じいちゃん、大丈夫?」
 声をかけると、サングラスをかけ、チェアに寝転んでいたじいちゃんが身体を起こした。傍らにはビールの空き瓶が二本転がっていた。
「ん、ジウランか。いい天気だよな」
「太陽浴びて、ビール飲んで……体にいいとは思えないけど」
「何だ、お前は。わしのかあちゃんか?」
「えっ、でも昨日、あのいかつい人とやりあって、病院に運ばれたって」
「ああ、あんなのは怪我の内に入らん。肋骨なんざ、明日にはくっつく」
「ふーん」

「かあちゃんって言えばな、さっきまでコザサが来てた」
「……ぼくのおばあちゃん?」
「まあ、そうなるな。山を下りて神楽坂でシメノと一緒に小料理屋やってるんだと」
「へえ、じいちゃん。また入り浸りだね」
「ところがよ、まだ行ってもないのに出入り禁止食らった。バカにしやがって」
「やっぱり『シルクワーム』だよね。昨日シゲさんに会ったよ」
「ん、それがどうかしたか?」

「あ、そうか。じいちゃんはあっちの世界でのシゲさん知らないんだ――そんな事よりさ、今はいつだと思う?」
「6月の下旬だ」
「うん、あっちの世界でぼくが冒険を始めたばかりの頃なんだよ」
「『あっち、あっち』ってうるせえなあ」
「だってさ」
「6月だったとしたら何だってんだ。何かいい事でも期待してるんなら、こんな所で油売ってないで、やる事があるんじゃねえのかよ」
「……」
「とっとと行きやがれ。うじうじしてると縁切るぞ」
「わかった」

 
 じいちゃんは砂浜をとぼとぼ歩くぼくの背中に声をかけた。
「しっかりやれよ」

 

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