7.3. Story 4 海賊団

2 エミリオとの決着

 

『ウォール』の破壊

 コウ、セキはバスキアとエリオ・レアルのポートで落ち合った。
 自分のシップを整備していたバスキアは照れくさそうに言った。
「このシップをもう一度引っ張り出すとは思わなかったよ。旧式だし、動くかどうか心配だ」
「確かに年季の入った機体だな」
「かれこれ六十年近くは乗っているかな」
「『ウォール』もこれで抜けてきたのかい?」
「ああ、その話をしなければなかったな。君たちはどうやって抜けたんだい?」

 コウは『ウォール』に開いた穴を苦労して探し出した話をした。
「――なるほど。実際にその方法を試す人間がいたとは驚きだ。私の場合はこうだ。私には特殊な能力が備わっていてね、異次元への穴を見極める事ができるんだ。だから苦もなくこちらに来る事ができた」
「異次元への穴ってのはおれたちが見つけ出した穴とは違うのかい?」
「ああ、全く違う。異次元への穴は普通の人間には見えない。それを見る事ができ、利用できるのは『上の世界』の人間だけだと言われている」
「……って事は?」
「創造主が『ウォール』を作動させたと思われる場所のすぐそばにその穴は開いていた。その場所に行けば」
「どうして破壊しなかったんだい?」
「戦いにも疲れていたし、創造主の企みを打ち破るほどの度胸があろうはずもない。だからそのままにしておいた」
「よっしゃ、それじゃあこうしようぜ。まずは『ウォール』をぶっ壊してから《神秘の星》に乗り込んでエミリオをとっちめる。どうだい?」
「異論はない。早速行こう」

 
 二隻のシップは《密林の星》の方向に進んだ途中にある星団の近くに来た。
「あの星団に無人の小惑星があって、そこに装置らしきものがあるはずだ」
 バスキアの言葉に従って星団の中に進み、目当ての小惑星を見つけるとセキが声を上げた。
「――あれはカルペディエム?」
 セキのはるか前方には、《青の星》のディエムと似た形の捻じれた直方体が浮かんでいるのが見えた。
「ん、セキ君。それは何だい?」
「《青の星》にたくさんある、Arhatsが建てたという謎のオブジェです」
「不思議な物だとは思っていたがどうやら私の勘は当たっていたようだ。私はこのすぐ傍のほら、あのもやもやとした空間を通って来たんだ。あの物体には創造主が関係していて、おそらく『ウォール』を作り出しているのだね」
「多分、中には石がはまってて、あの装置でその力を増幅してんだ――何、ぶっ壊せばすぐにわかるさ」
「誰が壊すのを担当するかね」とバスキアが言った。「私の弓矢でもセキ君の剣でもある程度はいけるだろうが、やはりコウ君の棒が一番適任だな」
「まあな。この棒はArhatウルトマの肋骨からできてるからいい勝負だぜ」
「ほぉ、そんな凄い物、どうやって手に入れたんだい?」
「おれの彼女はウルトマの娘なんだ」
「……その棒を絶対に手放してはいけないね。いつか君を助ける日が来るはずだから、いつでも手元に置いておくんだよ」
「何だよ、バスキアさんも順天と同じ事言うのかよ」

 
 コウがディエムそっくりの物体の前に立って呼吸を整え、棒を振り上げた。
 宙高く舞い上がり、十メートルはありそうなその物体に渾身の力を込めて棒を振り下ろすと物体は木端微塵に砕けた。
 すると中から銀色に輝く石が飛び出して、飛び去ろうとした。
「セキ、石だ!」
「任せて」
 セキは飛び去ろうとする石を目がけて重力制御を行い、動きを止め、ゆっくりと自分の手元に引き寄せた。石がすっぽりとセキの掌に収まるとセキはにっこり笑った。
「回収完了」
「いや、二人とも凄い力だな」とバスキアが感心して言った。
「話は後だよ、バスキアさん。『ウォール』を破壊したのがばれない内に《神秘の星》に行かないと、エミリオが何をしでかすかわからねえ」
「ああ、完全に『ウォール』が消え去るまでには多少猶予があるだろうが急ごう――ん、セキ君、どうした?」
「いえ、片方のポケットに石を入れて、もう片方にミズチを隠してるからぱんぱんになっちゃって」

 

再び《神秘の星》

 三人は二隻のシップで《神秘の星》に急行した。前回と同じく近くの小惑星に移動させられて不思議なサイズダウンの術をかけられた。
「――なるほど。これもきっと石の力だな」
 移動のシップの中でバスキアが小声で言った。
「でもからくりがわからねえんだよ」
「私に考えがある」
 そう言うとバスキアは監視のために座っていた一人の兵士に近付き、話しかける振りをして懐から赤と白の水玉模様の石を取り出し、兵士の耳元で何かを囁いた。
「あっ!」
 セキが思わず叫ぶのを目で制してバスキアは兵士に小声で言った。
「さて、私も石の力を使うのは初めてだが、この石がその名の通り、” Mind Steering ”であれば、君は私の言う事に答えなければならない。わかるね」
「……はい」
「この物質のサイズを変える装置はどこにあるんだい?」
「……見た事はありませんが、砂漠の奥深く……と聞いています」
「なるほど。ありがとう」
 バスキアはコウたちの所に戻ってウインクをした。
「……バスキアさん、何であんたが石を?」
「話は後だ。今は一刻も早くその装置を破壊しよう」

 
 星に到着し、前回の訪問と同じく王宮に案内され、すぐにエミリオが姿を現した。
「おお、帰ってこられましたな。《獣の星》の方の首尾は伺っておりますぞ。クラモントを退治して下さったそうではありませんか。もう一方の《魔王の星》はどうなりましたかな?おや、一人お仲間が増えておりますな」
「総司令」とコウが恭しく言った。「《魔王の星》の状況についてはこちらにいるバスキアが説明を致します」
「連邦は人材に事欠きませんな。で、どうでした?」

 バスキアが咳払いを一つしてから話し出した。
「鎧の封印は確かに緩んでおりました。それに乗じて新たな魔王を名乗る不埒者がおりましたが、これを成敗し、再び封印を確固たるものにしてまいりました」
「では当分は心配ありませんな」
「はい。ですが――」
「ですが、何でしょう?」
「やはり根本的な対策が必要な時期に差し掛かっております」
「根本的な対策とは?」
「鎧の破壊、あるいは消滅です」
「それこそが望んでいる事です。ですがそんな事が可能でしょうか?」
「ここにいる英雄お二人の力を持ってすればあるいは――」
「なるほど。よくわかりました」

「ところでエミリオさん」とコウが言った。「連邦の誠意は見せたんだ。話し合いのテーブルにつく件、考えてもらえるんだろうね?」
「その件は明日にでも。今日は皆様が無事戻られた喜ばしい日、祝いの宴を開かせて頂けませんか?」

 
 エミリオが下がり、コウたちも休息のための広間に案内された。
「ふん、のらりくらりか。ああやって時間稼ぎをして、今度は鎧の完全な破壊を条件とするのだろうな」
 バスキアが吐き捨てるように言った。
「姑息な男だよ」とコウが言った。
「しかしあまり時間稼ぎをされると『ウォール』の件を気付かれるぞ。どうするんだ?」
「そっちの準備も進んでるはずなんだがね――」

 広間にいるコウたちのために果物と水を手にした顔をベールで覆った女性が現れたので、コウは話を途中で止めた。
 女性はコウのグラスに水を注ぐ際に小声で囁いた。
「コウ様、ミシェクです。何か言伝は?」
「ホイットスに伝えてくれ。『ウォール』はすでに破壊した。今夜決行。適当な頃合を見て王宮を襲撃してくれ。おれたちは内部から呼応する。以上だ」
「かしこまりました。そう伝えます」
「ああ、一つ聞きたい事があった。王宮の前に広がる砂漠の奥には何がある?」
「砂漠の奥ですか。『王家の墓』と呼ばれる遺跡ですが」
「――わかった。じゃあ後でな」

 

蜂起

 王宮での盛大な宴が開始された。
 宴もたけなわという頃になって周囲がにわかに騒がしくなった。
 一人の兵士がエミリオに耳打ちし、エミリオは黙って頷いた。
「総司令、どうしたい?」
「いや、外でちょっとした騒ぎが起こっているようでしてな。何、気にする必要はありません」
「ふーん、ならいいけどな」
 その後も周囲の騒ぎは一向に収まる気配を見せなかった。エミリオが徐々にいらいらしたような素振りを見せ始め、コウが再び声をかけた。
「なあ、本当に何もないのかい?」
「……お恥ずかしい話ですが、奴隷、いえ、反体制派の者たちがこの王宮の周りで騒いでいるようなのです」
「へへへ。ここに居合わせたのも何かの縁だ。力を貸そうじゃないの」とコウが嬉しそうに言った。
「おお、真ですか。それは助かります。銀河の英雄の力を持ってすれば――」

 エミリオの言葉は途中で凍りついた。立ち上がったコウたちは得物を手にしてエミリオを取り囲んだ。
「誰がお前に力を貸すなんて言ったよ」
 コウが背後から襲いかかる親衛隊の兵士を見もせずに突き倒しながら言った。
「そう。君の嫌いな『奴隷』に力を貸してあげるんだよ」
 セキはその場を離れ、兵士たちに向かって炎をまき散らした。
「連邦はならず者の集団か!」
 護衛たちに守られながら喚き散らすエミリオにコウが静かに言った。
「反乱を起こしたのはこの星の住民だ。連邦は何も関与していない」

 セキが護衛に前後左右を守らせるエミリオに一歩近寄ろうとした時に異変が起こった。
 エミリオの足元にぽっかりと黒い穴が開き、エミリオと護衛たちの姿は消えた。
「ありゃ、逃げられた」
「まあ、いいさ。王宮には戻ってこれねえ。袋のネズミさ」
 バスキアは広間を離れ、バルコニーに出て、外で戦っているホイットスたちに向かって大声で叫んだ。
「聞け。エミリオ一味を王宮から追い出したぞ。後は煮るなり焼くなり好きにしろ!」
 兵士たちから「わーっ」という歓声が上がると共に、エミリオの親衛隊の旗色は悪くなり、逃げ出す兵士も現れた。
 王宮内の兵士たちを片付けたコウがバルコニーにやってきた。
「時間の問題だな」
「うむ。だがまだ装置を破壊していない――」

 
 バスキアが言いかけた時、王宮の前の砂漠の向こうから何かがやってくるのが見えた。
 ホイットスがコウの下にやってきて言った。
「来ました。あれがエミリオの秘密兵器。地上破壊艇です。私たちの仲間が幾度も煮え湯を飲まされた恐ろしい兵器です」
「ああ、一艇だけじゃねえ。集団で来やがった。でも普通の縮尺で見れば大型シップ程度なんだろうけどな」
「そんな悠長な事を言っている場合ではありませんぞ」

 ホイットスが叫んだのと同時にはるか先の地上破壊艇から砲撃が開始され、王宮の周りに白煙が上がり、爆風で人が倒れた。
「あなた方は王宮の中に避難していて下さい。ここは私が」
 バスキアが前に進み出て、木の矢を弓に番えようとするのを見てホイットスはため息をついた。
「そんな木の矢では……」
「まあ、見ていなさい――ギズボアナ・レントリアナ!大地の精霊よ。地を裂き、全てを滅するがよい」

 バスキアの放った矢は力なく砂漠の砂山に刺さったかと思うと、砂山が光を帯び、そこから幾筋もの光が破壊艇に向かって砂漠の毒蛇のようにくねりながら砂の上を進んだ。
 やがて破壊艇は動きを止め、大爆発を起こした。
「……すごい」
「ここで待っていても仕方ない。砂漠の奥に攻め入ろうではないか――ん、セキ君はどこに行った?」
「さあね。エミリオを追っかけて王宮の抜け穴に飛び込んだみてえだから、そのうちどっかで会えるよ」

 
 バスキア、コウ、ホイットスが数名の男を伴って砂漠を進んだ。すると今度は砂漠の奥から別の巨大なものが現れた。
「何だありゃ――おい、見てみろよ。でっかいエミリオだぜ」とコウが言った。
「うむ。我々が普段の1/6のサイズになっているにしてもあれは大きいな。おそらく装置にはサイズを小さくするだけでなく、巨大化させる機能もついているのだろう」とバスキアが分析した。
「あんなのに踏みつぶされたら一たまりもありませんよ」とホイットスが言った。
 巨大なエミリオは大股歩きでぐんぐんコウたちに迫った。
「はははは。私を怒らせた罰だ。誰にも渡しはしない。ここは私の王国だ。死ぬがよい!」

「エミリオ、命運尽きたのはお前の方だ」とバスキアが静かに言った。「『ウォール』はすでに破壊した。お前がどうあがいても二、三日で滅ぼされる」
「――何、何という事をしてくれたのだ。Arhatギーギの力の石、” Distortion ”により空間を歪め、銀河を分断する壁を作って頂いたのに。お前らは創造主の意図に逆らうつもりか?」
「さあ、Arhatの意図なんておれたちには関係ねえ。でもこのサイズを変える仕組みも『石』の力って訳か?」
「ふふふ、渡さん、誰にも渡さんぞ。Arhatグモの石、” Make It Big ”は私のものだ!」
「ふん、語るに落ちたか。じゃあバスキアさん、始めますか?」
 コウが棒を手に取るとバスキアが止めた。
「いや、エミリオの向こうを見ろ。セキがやってくる」

 
「ねえ、皆、見てよ。ミズチが進化したよ」
 遠くから叫び声を上げながらやってきたセキは白く輝く全長一メートルほどの子供の龍にまたがっていた。まだか細いその龍はくねくねと動きながらこちらに向かって飛んできた。
「何だよ、あいつは。相変わらず呑気だな」
 再び棒を手に取ってエミリオに向かっていこうとするコウの背中にバスキアが声をかけた。
「コウ君。陸天殿の話通りだとすれば、エミリオの本体はおそらく奴の首筋から背中にかけてだ」
「おう」

 
 コウが巨大化したエミリオの頭上に飛び上がり、棒を打ちこんだがエミリオは効いたような素振りを見せなかった。
 背後から追いついたセキが剣を抜くとコウが言った。
「セキ、面倒くさいから重力制御しちまえよ」
「うん、やってみる」
 成長した蛟にまたがったまま、セキはエミリオの重力を解放した。奇妙な叫び声とともにエミリオの巨体が宙に舞い、そのまま砂漠に落下した。
「バスキアさん」
「うむ」
 コウに声をかけられてバスキアは矢を番えた。
「セキ君も協力してくれ。ギズボアナ・ウーラウ、火の精霊よ、全てを焼き尽くせ!」
 バスキアの放った矢は空中で静止すると、それをセキの『焔の剣』から噴き出した炎の渦が包み込んだ。空中にでき上がった大火球は倒れて動けなくなったエミリオの背中を直撃した。
「ぐわぁ」
 エミリオの体が炎に包まれ、そこから巨大な緑色の液体のようなものがこぼれ出ようとしていた。
「あのもがいてるのが本体みたいだ。どうする、バスキアさん?」
「うむ。このまま生きていてもいい事はない。《明晰の星》のたった一人の生き残りよ。安らかに眠るがよい!」
 バスキアの放った矢が光の帯を描き、緑色の液体に命中すると、液体はもがくのを止めておとなしくなった。やがてエミリオの体を焼いていた炎に包まれ、全てが灰に変わった。

 
「さて、これでエミリオは倒した。ホイットス、この星はどうあるべきだ?」
 コウの質問にホイットスは少し困ったような表情になった。
「『ウォール』も破壊されたと聞きましたので、今のままのサイズでは何かと不都合も多いでしょう。おそらくほとんどの人間は元のサイズに戻って生活するのを望むはずです。ただその場合、この星が手狭になった時が恐ろしいです」
「集団自殺か。そん時はどっか別の星に移住すりゃいいんじゃねえか。困った時のために連邦はあるんだぜ」
「そうですね。私たちはもう一人ではない。では住民のサイズを元に戻しましょう」
「ああ、そのためには石を持ってこなきゃだな」
「もう回収してあるよ」とセキが言い、蛟の口から真っ赤な石を取り出した。「エミリオを追っていったら、そこはどうやら元のサイズの時に暮らしてた王宮みたいだった。そこの一番奥に装置があって、その中に石があった」
「”Distortion”の時の変な建物と一緒か。エミリオは毎回、そこで『メイク・イット・スモール』って言ってたんだな」

 
 住民のサイズも元に戻り、コウたちが《神秘の星》に別れを告げる時がきた。
「でもいいの」とセキがホイットスに尋ねた。「”Make It Big”を連邦で預かっちゃって」
「構いません。そのようなものは我々には不要。これからは連邦の星として共に生きるのですから」
「わかった。でも僕の胸ポケットは片方に”Distortion”、もう片方に”Make It Big”が入ってるからパンパンだよ」
「へっへへ。セキ、グラマーなお姉さんみてえじゃねえか」
「そうだ、コウ君、セキ君。私からもこれを」
 バスキアが言って懐の石をコウに投げて寄越した。
「バスキアさん、でもこれはあんたの」
「ホイットスと同じさ。これは私には不要なもの。連邦で保管してもらう方が安全だ」
「バスキアさん、これはどこで見つけたんだい?」
「私が次元の狭間を通ってこちらに来たのは話したね。実はその時に異次元で発見したんだよ。あまりにも珍しい色合いだったのでついつい拝借した」
「ふーん、石の中には異次元にあるものもあるんだなあ。こりゃあ全部見つけるのは大変だ」
「えっ、コウ」とセキが言った。「全部って全部でいくつあるの?」
「そりゃ全部って言えばArhatsの数だけあんだろ」
「Arhatsって何人いるの?」
「さあな」
「諸説あるが、どうやら十八名だ」とバスキアが言った。「私もその石の由来を調べたが、どうやら『空を翔ける者』の祖、モンリュトルの力らしい」
「そんなに……” Resurrection ”でしょ、” Sands of Time ”でしょ、”Distortion”、”Make It Big”、そして”Mind Steering”。まだ五つしか集まってないよ」
「危険な力を行使されないように連邦が保管するってだけで石を集めるのが目的じゃないからな。それに今回みたいに三つも集まりゃ、すぐに全部回収できるんじゃねえか」
「コウ君の言う通りだ。創造主の力など人間に使いこなせるはずもない。このような力は悪用されないようにするのが一番、それには連邦がしっかりさえしていれば問題はないはずだ」
「さすがバスキアさん、大人は言う事違うねえ」

 コウに冷やかされ、バスキアは少し困ったような表情になった。
「だがセキ君の話を聞いて”Sands of Time”が手元にあればと思ったのは事実だ。時間を戻す力さえあれば、ロイとゼクトを救えたのに――」
「ん……ゼクトってのはゼクト・ファンデザンデかい?」
「何故その名を?」
「おれたちの父さんと一緒に銀河の危機を救った通称『七武神』の一人、今でも連邦軍の最高司令官がゼクトだよ」
「……そうだったのか。良かった、良かった、ゼクト。立派に生きていてくれたのだな。これで長年の胸のつかえが取れた。感謝するよ、コウ君、セキ君」

「バスキアさんも連邦に来てくれるといいのに」とセキが言った。
「いや、《魔王の星》に家族がいるからこれでお別れだ。だが『ウォール』もなくなったし、これからは頻繁に行き来ができるようになる。《神秘の星》だけでなく、《獣の星》や《念の星》、そして《魔王の星》も連邦加盟という事になる。私も妻の里帰りに付き合わねばならないし、君たちも是非、また遊びにきてほしい」
「じゃあバスキアさん、元気で」
「君たちもな」
「ベアトリーチェとアイシャにもよろしく」
「ああ、伝えておくよ。ミズチが大きくなったと聞いたら驚くだろう」

 

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