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2 真の目的
場所を変え、町はずれの屋台で宴会が再開された。
コウとセキは大樹老人に尋ねた。
「これからどうすればいいんだ?」
「うむ」と老人が答えた。「セキにはまずは南に行ってもらおう」
「あの大都会か。不思議な気配が渦巻いてたな」とコウが串に刺さった肉に食らいつきながら言った。
「街のボスはかつて養万春と呼ばれていた男だ」
「えっ、闇組織のボスでしょ?」とセキが驚いて叫んだ。
「しばらく前に養万春は部下に裏切られて首を刎ねられたのじゃが、今は正真正銘の飛頭蛮と呼ばれる魔物として生まれ変わった」
「ふーん。じゃあ会いに行くよ」
「そこでもう一人お前を待っている」
「あ……」
「なるほど」とコウが言った。「何となく想像が付いたわ。セキ、しっかりやれよ」
「コウは西じゃ。山を越えた西の草原地帯に住む騎馬族の英雄テムジンの尽力で、シシンが西から山を降りないように食い止めておるが、いつまで険しい山中に釘付けにしておけるか。配下の二人はあまりにも手強い」
「何ていう奴らだい?」
「一人はホウセン、恐るべき腕力の持ち主。もう一人がナタ、少年だが様々な術を使う」
「ふーん、何でシシンを西に行かせちゃだめなんだ?」
「それこそがロロの本当の狙いに関係ある。とにかくシシンを西に行かせてはならぬ」
「……ロロか。その名前、久々に聞いたけど今回の騒動の張本人の本当の狙いっていうからには、それなりの事だろうな」
「よいか、セキは南で飛頭蛮に会ったなら更に南に向かう。シシンと同じような邪悪の子を討ちながら、亜大陸に入り最終的には北上してヒマラヤを越えるがよい」
「えーっ、ネオにいたから大体の地形はわかるけどその距離は歩けないよ」
「心配するな。安全な土地は縮地で進めばよい」
「?……よくわからないけど心配ないんだね」
「素直な良い子じゃ。コウはシシンを倒した後、テムジンを仲間にして南下じゃ」
「なあ、じいさん。ロロの本当の狙いって何だよ?」
「お主たち二人の兄妹が遥か西の地で出会う蘇ったもの。それこそが本当の魔、ロロが蘇らせたかったもの」
「そんなのはそいつを直接シメちまえば終わりだったじゃないか」
「わしらはロロの真の狙いに気付かず、後手を踏んでしまったのじゃ。直接対峙するためには多くの魔物を倒さねばならぬ。このような状況となっては、そのものの願いが成就するのを水際で食い止めるくらいしかできぬ」
「それでシシンを倒すんだな」
「うむ、シシンを倒し、シシンに代わる者も倒し、わしらの意を汲んだ者が残るようにしなければならん」
「あー、よくわかんねえな。何だよ、意を汲んだ者って」
「時が来ればわかる」
「西に悪の本体がいるならおれたちもウエストに急いだ方がいいんじゃねえのか?」
「いや、セキとお主はこのまま進めばよい。約束の地は西蔵、そこに全ての兄妹が集まる」