――わしが初版を発行したのはまだ『銀河の叡智』が盛んな頃。当然その時代だったからエピソードは３までしかなかった。
その後、わしは《智の星団》から救い出され、《青の星》に戻って第二版を二回に分けて刊行した。エピソードで言うと４から７までだ。その時に初版に大幅に手を加えていた。
それからエピソード８と９の途中まで。これが現在書かれている全てだ――
「えっ、エピソード９はまだ途中なんですか？」と美夜が驚いたような声を上げた。
「うむ、まあな。そんな事よりももう一度、初版では書かれなかった事実を含めて各版の特徴を教えてやろう」
じいちゃんはそう言うと、一枚の紙に上から下に数字を振っていき、その右にマル印をつけ出した。
１－１ ○ １－２ ○ １－３ ○ ● １－４ ○ ● １－５ ○ ● １－６ ○ ● １－７ ○ ● １－８ － ○ １－９ － ○
「まずエピソード１。この○は初版で書かれてるという意味だ。構成は変わってないが、ヤッカームの行動について書かれていない。それを第二版で改訂したのが隣の●だ。後は前にも言ったと思うが、そもそも初版ではルンビアと別れて以降のサフィの行動についてはほとんど触れられてない。－の印の部分だな。それを第二版で書き足した。当然、改訂も行っている」
「師匠の存在も初版では明らかではなかったんですね？」
「ああ、ケイジは完全にノーマークだったな」
じいちゃんは続けた。
２－１ ○ ２－２ ○ ２－３ ○ ● ２－４ ○ ● ２－５ ○ ● ２－６ ○ ● ２－７ ○ ● ２－８ ○ ● ２－９ ○ ●
「エピソード２も同じだ。ケイジとヤーマスッド、こいつらの行動が初版ではわからなかった」
３－１ ○ ３－２ ○ ● ３－３ ○ ３－４ ○ ３－５ ○ ３－６ ○ ３－７ ○ ３－８ － ○ ３－９ － ○
「エピソード３。チャプター８と９を書くためにわしは《青の星》に行ったようなもんだからな。以上が初版の構成だ。何か質問は？」
特に質問も出ずじいちゃんは４の数字を紙に書き始めた。
４－１ － ○ ４－２ － ○ ４－３ － ○ ４－４ － ○ ４－５ － ○ ４－６ － ○ ４－７ － ○ ４－８ － ○ ４－９ － ○
「まあ、敢えて書くならこうかな。実際には後でわかった部分を書き変えてるがな」
じいちゃんの表情は笑顔に変わりつつあった。何がそんなに楽しいのだろうか。
５－１ － ○ ５－２ － ○ ５－３ － ○ ５－４ － ○ ５－５ － ○ ５－６ － ○ ５－７ － ○ ５－８ － ○ ５－９ － ○
「後はエピソード６も７も８も一緒だ。第二版を記した時にはわしの中に全ての知識が詰まっていたから大幅改訂はしていない」
じいちゃん、笑ってるけど何がそんなに楽しいの？
「お前たちに言ってもわかってもらえんだろうが――この世界の多様性に笑ってたんだよ」
「多様性？」と美夜が言った。
「そうだ。考えてもみろ。わしらが唯一拠り所とする『クロニクル』には初版と第二版がある。つまり二つの世界がある訳だ。そして今、わしらが放り込まれた今の世界があり、わしらが取り戻すべき事実の世界がある」
「えっ、でも事実の世界は……『クロニクル』の第二版の世界なんじゃ？」
「ところがそう簡単なもんじゃねえんだよ――お前たち、カルぺディエムについてどう思った？」
「あまりに唐突過ぎて、その意義がよくわからないというのが正直な感想です」
「そうだろう。カルぺディエムが出現したのが１９７０年、その時にArhatsはこの世界に悪さをしやがったんだ。となるとわしらが取り戻す世界はディエムがある世界かもしれないし、ディエムのない世界かもしれないって事だ」
「……よくわかりません」
「いいって事よ。気にすんな。ディエムなんて所詮はArhatsのおまけだ」
じいちゃんは大笑いしながら操縦席に戻っていった。
登場人物：ジウランの航海日誌
| 名 Name | 姓 Family Name | 解説 Description |
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|---|---|---|---|
| ジュネ | パラディス | 《花の星》の女王 | |
| ゼクト | ファンデザンデ | 《商人の星》の商船団のボディーガード | |
| コメッティーノ | 盗賊 | ||
| ハルナータ | 《賢者の星》の最後の王 | ||
| アダン | マノア | 《オアシスの星》の指導者 | |
| エカテリン | マノア | アダンの母 | |
| リチャード | センテニア | 《鉄の星》の王 | |
| ニナ | フォルスト | 《巨大な星》の舞台女優 | |
| ジェニー | アルバラード | 《巨大な星》の舞台女優 | |
| 葵 | 《巨大な星》、『隠れ里』の当主 | ||
| 陸天 | 《念の星》の修行僧 | ||
| ファランドール | 《獣の星》の王 | ||
| ミナモ | 《獣の星》の女王 | ||
| ヌニェス | 《獣の星》の王 | ||
| マフリ | センテニア | ヌニェスの妻 | |
| 公孫 | 転地 | 《武の星》の指導者 | |
| 公孫 | 水牙 | 転地の子 | |
| ミミィ | 《武の星》の客分 | ||
| 王先生 | 《武の星》の客分 | ||
| ランドスライド | 《精霊のコロニー》の指導者 | ||
| カザハナ | 精霊 | ||
| アイシャ | マリスのパートナー | ||
| デプイ | マリスのパートナー | ||
| マリス | 覇王を目指す者 | ||
| マル | マリスの父 | ||
| ツワコ | マリスの母 |
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