ジウランと美夜の日記 (1)

20XX.7.23 驟雨

 夕方、いきなり空が暗くなってバケツの水を引っくり返したような大雨になった。ゲリラ豪雨だ。
 雨は三十分程度で上がって後には蒸し暑さだけが残った。
 もえおばさんが言っていた。昔の日本の夏は夕立が来た後には涼しくなったものだって。いつからこの国は熱帯になったのだろうか。

 ジウランは大雨の中をコンビニに出掛けていった。今日は6時から2時までの八時間労働だ。
 今、この家の中で呼吸をしているのは私と猫のミーシュカ、そしてほのかに光る『クロニクル』だけだ。この資料はこれから私に何を語りかけ、何を見せてくれるのだろう。
 ジウランは気が付いていないだろうが、今朝、部屋に入った瞬間に、私はそこにいないはずのジウランのおじいさまがいると思った。そして、それが『クロニクル』から発せられているものだというのを確信した。

 おじいさまの能力、それは言葉に魂を宿らせ、力を与える事なのだ。だからこそ彼らはおじいさまを恐れ、手を出せなかった。うちのボスが「敵には回したくない人間だ」と言っていた意味がやっとわかった気がする。
 私はこれから『クロニクル』を読むのではなく、伝説の冒険家デズモンド・ピアナと対話をするのだ。
 居ても立ってもいられない。そうだ、ジウランの仕事ぶりを見にコンビニに行って、夕飯と明日の朝食を買ってこよう。

 コンビニの袋を下げながら帰宅した。ジウランはちゃんと働いているようだった。
 さあ、がんばって資料に取りかかろう。
 マンションを引き払った事は、いずれ伝えればいい。

 

登場人物:ジウランと美夜の日記

 

 
Name

Family Name
解説
Description
貫一葉沢内閣調査室勤務。身寄りのないシゲの世話をし、ジウランたちに協力を申し出る
もえ市邨美夜が「おばさん」と呼び慕う女性
釉斎天野『パンクス』日本支部長
ケイジワンガミラの剣士

 

 Episode 1 三界

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