6.9. Story 2 後日談

3 会談

 

《再生の星》

 《再生の星》では多くの人が復興に向けて働いていた。ガインとキャティは王宮の保護作業に当たっていた。
 かつてリンがハルナータ王の霊から『鎮山の剣』を授けられた小部屋のさらに奥に続く部屋を偶然発見したガインたちは部屋の中を調べた。
「おい、キャティ。ちょっとこの碑銘を見てくれよ」
 ガインが大声を上げながら部屋の端に置いてあった石碑を指差した。
「何よ……あら、この文字、どこかで……そうか、リンの」
「ああ、よく似てるよな。少しなら読めるぞ」

 ユウヅツよ、変わりなく過ごしているか。お前もまたこの夜空を見ているだろうか――

「何だ、こりゃ?」
「わかんない。連邦に連絡した方がいいんじゃない?」
「ああ、もう少し調べてからな」

 

極秘会談

 マザーからの呼び出しを受けたリンはホーリィプレイスに向かった。
 家の前ではミミィがリンを出迎えた。
「ああ、ミミィ。なかなか会えなくてごめんね。まだどうしていいかわからないんだ」
「うふふ、その辺の事を今からマザーが話してくれるみたいですよ」

 
 リンが家の中に入ると、不思議なメンバーが待っていた。
 車椅子のマザーの隣で静かにお茶を飲んでいたのがジノーラ、その隣で所在なさげに立っていたのがマックスウェルだった。
「えっ、本当に僕に話があるの?」
「そうだよ。まあ、適当に座りなよ」

 
「さて」
 リンが席に着いたのを見計らってマザーが口を開いた。
「沙耶香、ジュネ、ニナの話を総合すると、あんた、近くの星をぶらぶら渡り歩いて面白おかしく過ごしてるみたいじゃないか」
「うん、《歌の星》にも行ったし、ジェニーの故郷、《鉱山の星》にも行った。それからネアナリスさんの招待で――
「もういいよ。とにかくあんたは務めを果たしちゃいない」
「務め?」

「胸の内はお察し済みさ。あんたは自分が担っている責務の重さを自覚している。だからそれを次の世代に受け渡すのをためらっている」
「うん、僕の中にはまだとても凄いものが眠っているって事に薄々気付いてるんだ。でも僕一人じゃあ、覚えてないけどこの間と同じ結果でしかない。かと言って生まれてくる子供にその役目を押し付けるなんてできない」

 
「リン」とジノーラが言った。「創造主はそれほど気が長い訳でもない。ここまで来たのならば一気に結末までを見たがっている。今から二十年、そこがタイムリミットだと思ってくれたまえ」
「ええ、二十年の間にもう一回、ナインライブズを呼び出さなきゃならないの?」
 リンはマザーに問いかけた。
「自覚してるだろ。あんた一人では本物を呼び出す事なんてできないのを」
「でもやっぱり子供には――

「いいかい。リン、よくお聞き。何のためにあんたには六人も婚約者がいると思ってんだい。一人ずつ子を儲ければそれだけで六人、頑張れば九人の子なんて訳ないさ」
「その通り」とジノーラがマザーの後を引き取って言った。「一人の子に全てを負わせるのは酷であっても、それが九人となれば話は別です。恐らく現在の何倍ものパワーを制御し、真のナインライブズが出現する可能性はぐっと高まります」
「リンよ。わくわくするではないか」とマックスウェルが言った。「善と悪、力と智、聖と邪、そして天と人と王、その九つが一つになる事によって生み出されるものの凄まじさ。お前は九つの種族でそれを表現しようとしたが、あれよりもはるかに大きなスケールだ」

「考えた事なかったなあ。でもそんなうまい具合に九人の子供に善とか悪とかそういった……」
「心配ないよ」とマザーが言った。「あたしに任せておけばいいさ」
「マザー、それは――

 マックスウェルが途中まで言いかけた時、ドアが開いてミミィが顔を出した。
「リチャードが到着しました」

 

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