ジウランの日記 (7)

20XX.7.5 Memories of You

 朝がやってきた。愛し合う恋人同士であれば余韻に包まれたまま、甘く気だるい目覚めの時を迎えるのだろう。でもベッドのぼくの隣のスペースからはすでに温もりが薄れていた。
 のろのろと起き出して、大きく伸びをした時に、テーブルの上の走り書きのメモに目がいった。
 
 中野の調査よろしく。あたしは明後日の夜から新宿を探します
 美夜

 メモにはそれだけしか書いてなかった。
 甘い言葉を期待した訳ではなかったけど、少し胸が痛んだ。美夜は言葉通り、すっかり元の生活に戻ったみたいだ。
 美夜にとって、ぼくは目標を達成するためのパートナー、それ以上でもそれ以下でもない。ただ目標が大きすぎるから、ぼくたちは長い期間付き合っていかなければならない。
 昨夜の一件を割り切れるのか、ぼくには自信がない――
 でも前に進むしかないんだ。軽井沢みたいな事はまた起こる。そうしたらこんな甘っちょろい考えは通用しないはずだ。

 携帯にメールが届いていた。ナカナからだ。

 最後に会ってから一週間経つね。
 元気だから心配しないでね。(してないか)
 返信くれるとうれしいな。

 ナカナ

 P.S. シグレに赤ちゃんが生まれました。名前はマクリーンです。すっごくかわいいんだよ

 返信をしようと思うが、何を書いたらいいのかわからず途中で止めた。
 気がつけば下書きフォルダー(6)になっていた。

 

登場人物:ジウランの日記

 

 
Name

Family Name
解説
Description
ジウランピアナ大学生。行方不明になった祖父のメッセージに従い、『クロニクル』という文書を読み進む
デズモンドピアナジウランの祖父
一年前から消息不明
能太郎ピアナジウランの父
ジウランが幼い頃に交通事故で死亡
定身中原文京区M町にある佐倉家の屋敷の執事
美夜神代ジウランをサポートする女性
都立H図書館に勤務
菜花名
(ナカナ)
立川ジウランのガールフレンド
西浦元警視庁勤務
美夜と関係があるらしい
大吾蒲田元警視庁勤務
現在は著名な犯罪評論家
シゲ
(二郎)
重森伊豆の老人ホームにひっそりと暮らす

 

 Chapter 4 ヒガント
(巨大な星)

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