ジウランの日記 (5)

20XX.6.21 待ち人来る

 中原さんから速達が届いた。須良大都、真由美、沙耶香の一家が突然帰国したそうで、今夜のうちに軽井沢の別荘に移動するので明日別荘の方に遊びにいらっしゃい、と記してあった。

 あれ、何かおかしいぞ
 真由美さんと須良大都が結婚していた?
 しかもその娘が沙耶香さん?
 
 本来であれば「事実の世界」の住人が大挙して登場してきたのだから喜ばなきゃいけないんだけど、どこか引っかかるものがあった。

 M町のお屋敷で会った時には中原さんはそんな事、一言も言ってなかった
 しかもこの間みたいに何かあったら携帯に連絡してくれればいいのに速達だなんて……

 いや、引っかかるのはそこじゃない
 もっと根本的な……

 ぼくは本当に中原さんに会っているのだろうか?
 炎天下の中を一日中歩き回ったせいで幻を見たんじゃないか?

 幻――子供の頃、最後に見たの、あれは誰だったろう、刑事さんの友達?
 その時と同じで妙に体がふわふわとした感覚で、こういう時は決まって熱が出る。

 まずい、寝込んでなんかいられない。
 今のところの唯一の手がかりを手放す訳にはいかない。
 もう何も考えずに寝よう。

 

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