5. Chapter 1 遮る物

 Story 1 創造主の気まぐれ

 《巨大な星》、ヌエヴァポルトのカフェで二人のビジネスマンが話をしている。
「なあ、ニュース見たか?」
「『ウォール』の件か」
「まあ、《神秘の星》や《魔王の星》なんて行く機会もないから、俺たちには関係ないけどな」
「いや、マーチャント・シップは大変だぞ。今まで楽に行けてた星が、《祈りの星》経由、つまり銀河の下半分を通っていかないとならなくなったんだ。物価が上がるんじゃないか」
「なるほど。そいつは困ったな」

 《鉄の星》、プラの職人街ではケミラ工房の職工たちが休憩を取っている。
「あの『マグネティカ』ってのは何だろうな?」
「今のシップ技術じゃ乗り越えられないって話だ。最近じゃあ皆、《祈りの星》の方から迂回しているみたいだよ」
「シップの性能が悪いとか言われても困るよな。あんな突発的な異常事態に即座に対応できるかってんだ」
「でもよ、うちの工房がだめならどこが解決できる。落ち目のピエニオスか、それとも五元かぶれのペイムゥトか?」
「心配すんなよ。次の『銀河の叡智』で何もなかったみてえにぽろっとアイデアが出てくるよ」

 《商人の星》、連邦府ダレン、商人たちの集う食堂。
「やあ、新しいルートにはもう慣れましたか?」
「どうにかね。時間はかかるが、『ウォール』に激突したり、『マグネティカ』の磁気で宇宙の迷子になるよりはましだよ」
「結局、得をしたのは《大歓楽星団》ですな」
「それは何だい?」
「ご存じありませんか。《幻惑の星》、《魅惑の星》、《誘惑の星》、《蠱惑の星》が協力して一大娯楽ゾーンを作り上げたんですよ。シップが皆、《祈りの星》を経由するようになったのでこれが大当たりで人々が大挙して押しかけ、観光シップも急遽大増発の大賑わいだそうです」
「どんなはずみで運が転がってくるかわからんな」
「ムスクーリ家とバンブロス家が協力すれば、造作もないですよ。問題はいつまで協力体制が続くかでしょうがね」
「確かに。閃光覇王を輩出した伝統あるムスクーリ家と成り上がりのバンブロス家では仲違いは時間の問題だ」

 《巨大な星》、ダーランのビーチでは夕日を浴びて父と息子の親子連れが散歩をしている。
「ねえ、パパ。『うぉーる』とか『まぐねてぃか』ってこわいの?」
「ん、恐くはないよ。何でそんな事聞くんだい?」
「だってアレッシィくんが言ってたよ。もうすぐ、みだれたじだいになるんだって。それって、こわいことでしょ?」
「うーん、そんな事言ってたのか――確かに『ウォール』や『マグネティカ』は困った事だけど、だからといって『銀河の叡智』が終わる訳じゃないよ。安心しなさい」
「はーい」
 珍しい物でも見つけたのか、子供は父親の話の途中で走り出した。

 

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