4.4. Report 4 魔王の祠

Record 4 不完全な封印

 静寂を取り戻したジャウビター山ではようやく陸音の封印の儀式が終わりの時を迎えていた。
「これで最後になります」
 陸天が最後の護符を師に手渡して言った。
「ふむ」
 陸音が念を込めた札はまるで意志を持ったかのように岩戸の上部に張り付いた。
「終わったかい?」
 わしらは岩戸の周りに近づいた。
「ああ、護符は全て使ったが、ほれ、一枚無駄遣いしたじゃろ。あれのせいで九十九枚しか護符を貼れなかった。やはりそれでは完全な封印にならん。思ったより瘴気が強かったのお」
「ちっ、魔物の思う壺じゃねえか」
「そう言うな――ところでデズモンド、おんし、珍しいお守りを持っておるな」
「えっ、これか。これは友達の娘が持たせてくれたんだ。気休めだよ」
「ちょっと貸してはくれんか」

 わしがお守りを陸音に渡すと、陸音はすぐに中を改めた。
「ほぉ、思った通りじゃ。ほれ」と言って、陸音はお守りの中から小さく折りたたまれた紙を取り出した。「護符じゃ。しっかりと書いてあるわい」
「……おい、このお守りをくれたベアトリーチェはまだ子供だぞ。何でそんな魔除けの呪文を知ってんだ?」
「それはこちらが聞きたいわ。とにかくこれを使わせてもらおう。よいな」
「ああ、もちろんだ」
 陸音はベアトリーチェの書いた護符に丹念に念を込め直し、ふっと息を一つ吹きかけた。すると護符は自らの力で岩戸にぴたりと貼り付いた。
 次の瞬間、猛烈な光が辺りを包み、目を開けていられなくなった。光が収まり、岩戸を見ると、岩戸は輝く一枚鏡に変わっていた。
「ははは、こりゃいいや。いかにも封印完了って感じがすらあ」
「うむ。じゃがやはり不完全だな。これではもって五十年、へたをするともっと早くに封印が解けるかもしれん」
「そん時はまたあんたが封印すりゃいいじゃねえか?」
「老人をいたぶるのは感心せんな。次は陸天の時代じゃ。だがわしとておんしらの協力なしには封印できんかった。陸天一人では無理じゃろう」
「無責任だなあ」
「いつまでもこんな形ではいかんという意味じゃ。もっと根本的な解決が必要、次はきっとそれじゃな」
「根本的な解決って――鎧をぶっ壊すのか?」
「さあ、それはわからん。どのような形で根本的な解決が図られるか、わしにはわからんな。もしかすると再びこの鎧を着る魔王が現れるかもしれん」
「そうならねえ事を願うがな。さて、山を降りるか」

 

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 File 5 第三回大航海

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