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Record 2 ワンダーランド
「何だ、歓楽って名前が付いてるから乗客は男だらけかと思ってたわ」
観光シップの中でアンが尋ねた。
「そりゃあ、《幻惑の星》行きだからだ。家族で楽しめるワンダー ランドらしいじゃねえか」
「デズモンド」とそれまで静かに時代遅れの紙を束ねた本を読んでいたGMMが尋ねた。「この星に用はないだろう」
「まあ、いいじゃねえか。あらゆる星を巡ってみたいんだよ」
「そうよ、遺跡探しの一件もあるしね」
観光シップはリングのある星の平原に作られたポートに着陸した。乗客はぞろぞろと降り、わしらも最後に地上に降り立った。
「『バリニアランド』はこちらでーす」
出迎えに来ていた派手な衣装の女性が大声で叫び、乗客たちはそちらに向かって歩き出した。
「おい、デズモンド。遊園地に向かうようだぞ」
「……さすがにそれは。こんなむさくるしい男たちで遊園地は止めておこうぜ」
「ちょっと、デズモンド。あたしをあんたたち四名と一緒にしないでよ。いいじゃない、たまには童心に帰るのも」
結局、アンに押し切られ、バリニアランドと呼ばれる遊園地に入場した。
入園するとすぐにわしらは休憩所のテーブルに一直線に向かい、腰を落ち着けようとした。
「ちょっと、何やってるのよ」
「何って。これからじっくり飲むつもりさ。アンは好きに遊んでこいよ」
「あきれた……いいわ。ノータ、あんた、酒飲みじゃないんだから付き合いなさいよ」
アンはそう言ってノータの腕を引っ張っていった。
「……まあ、この中で誰か一人連れてくって事になればノータだろうな」
「ふざけんなよ」とJBが大声を出した。「おれが一番若いんだぜ。ルックスだってそんなに悪くはねえ」
「お前は人相が悪い。まだギャング時代の目付きのままなんだよ」
GMMが慰めてもJBは不満そうだった。
「やっぱ、このサングラスがいけねえのかなあ。ひげでも伸ばすかなあ」
「まあいいや。まだ日は高いが飲もうじゃねえか」
三人でグラスを重ねていると遊園地の係員を連れた紳士がやってきた。
「お楽しみ中、失礼します。私はこのバリニアランドの館長モームリと申しますが、何か不手際でもございましたか?」
モームリと名乗った紳士は時代がかった貴族のような出で立ちだった。
「お偉いさんかい。気にしねえでくれよ。俺たちゃ、楽しくやってるよ」
「それでしたらいいのですが……やはりお客様たちのような大人の男性の方たちには、《幻惑の星》は物足りないのでしょうねえ」
「まあ、正直言うとな。だが俺たちも遊びに来た訳じゃねえんだ」
「イサから連絡が届いてますので存じ上げております。シロンの歴史を調査中とか」
「ああ、この星にはシロンにまつわる逸話が何か残っているかい?」
「そうですな。やはり覇王の故郷の《魅惑の星》、シロンの故郷の《誘惑の星》、シロンが初手柄を立てた《蠱惑の星》に行きませんと面白い話は聞けないでしょうが、ワンガミラたちなら何かを知っているかもしれませんぞ」
「ワンガミラって……トカゲの顔した奴らか」
「左様で。この遊園地の反対側にある沼地に昔から暮らしております。彼らは争いを好まぬ熱心なバルジ教徒なのでこの星は平和ですよ」
「そこに行く事はできるかい?」
「……共存はしておりますが、積極的な交流をしているという訳でもないので――何より、沼地の奥のワンガミラの集落に着くまでにはボーリオの出る水辺を越えていかないとなりませんので、大変に危険です」
「行けねえ訳じゃねえんだな」
「はい。ただ歓待してもらえるかどうか」
「わかったよ。俺たちも騒ぎを起こしたくねえ。今回はあきらめて《魅惑の星》に向かうよ」
「その方が安全です。ではごゆっくり」