4.3. Report 3 精霊の誓い

Record 2 開かれない扉

 《灼熱の星》に一泊した後、次の目的地に向かって出発した。『豪雨候』がポートまで見送りにきてくれた。
「デズモンド殿。《地底の星》はあなたを歓待しないかもしれない」
「かもな。『地に潜る者』のネボリンド王の末裔に会ってみてえんだけどな」
「ネアナリス王は宮殿から出てくる事はありますまい。とりあえずお気をつけて行ってらっしゃい」
「ああ、ありがとうな。あんたもお元気で。領民はこんな王を持てて幸せ者だよ」

 
 シップは長い距離を航行した。
「この辺には海賊は出ないのかね?」
 ソントンが心配そうに言った。
「そもそも航行するシップ自体があんまりねえから海賊も寄り付かない。この辺りは暮らせるような星の数も少ねえし、発展のしようがないんだろうな」
 やがて《地底の星》が見えた。最初にそれに気付いたのはアンだった。
「ねえ、あれ見て」
 アンの示す先には不思議な光景が広がっていた。巨大なごつごつした岩山が闇夜の中にそびえ立っていた。岩山の様々な場所がぼんやりと白く光っており、遠目にはホタルの群れのように見えた。
「あれが地底の王宮か」

 
 シップは暗闇の中で着陸した。全く人の気配のない中、わしらは王宮への入口を探した。やがてソントンの囁くような声がした。
「あったぞ。ここが入口だ」
 ソントンが見つけた入口らしきものは金属の扉で固く閉ざされていた。
「『豪雨候』の言った通り歓迎はされてねえみてえだな」
「私の地裂弾で破壊しましょうか?」
 転地が言うとノータが困ったような声を出した。
「荒っぽいのは止めましょうよ」
「こんな暗がりでぐちぐち言ってても始まらないわよ」
 アンがそう言って、いきなり『火の鳥』を空に向けて放った。真っ赤な炎の鳥が空に舞い、周りはしばらくの間、昼間の明るさに変わった。
「誰だい。人の庭で火遊びをしてる奴は?」
 声の主を探したがどこにも誰も見当たらず、そのうちに『火の鳥』は消えた。
「おい、聞こえてるんなら言うぜ。俺たちゃ、ネアナリス王に会いたいんだよ」
「……」
「聞こえてんだろ。怪しい者じゃねえよ。歴史学者のデズモンドって者だ」
「……我が王はお前たちと会って話す事など何もないだろうよ」
「そんな冷たい事言うなよ。せっかく《巨大な星》から来たんだぜ」
「遠かろうと近かろうと『持たざる者』などとは会わない。わかったら帰れよ」
「話すだけ無駄って意味かい?」
「無駄、そうかもしれねえな。さあ、怒らせないうちに早く帰れよ」
「一つだけいいかい。あんたの名前は何て言うんだ?」
「聞いてどうすんだ――ミーダだよ」
「ありがとよ、ミーダ。またな」
「……」

 

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