4.1. Report 1 七聖と叡智

Record 5 最初と最後の叡智

 千年の間に渡って、定期的に発生した『銀河の叡智』だが、その始まりはデルギウスたちが生み出した『ダークエナジー航法』とされている。
 では最後の叡智はと言えば『ポリオーラル』だという事で間違いないだろう。

 インプリントの発達により銀河の人々の結び付きは飛躍的に高まったが、一つだけ問題があった。
 《古の世界》から広まったラテン語に近い言語体系の星同士のコミュニケーションには問題がなかったが、中には全く理解不能な言語を用いる星々が存在した。

 連邦大学の若き女性言語学者、ミネルバ・サックルローズはポータバインドの言語理解能力に最も憤慨する者の一人だった。
 何故ならそこには彼女の生まれた星、《狩人の星》でアラリアと呼ばれる特殊な種族の話す言語が含まれていなかったからである。
 アラリアの末裔、ミネルバはインプリントによる広範囲の調査、そして銀河の星々のフィールドスタディを通して、銀河の言語体系は百三十八に大別される事を発表した。
 フェデラルラボは彼女の理論をインプリントに組み込もうと努力した。そして叡智が発現し、それは現実となった。
 異なる言語は相手が口にした瞬間にポリオーラルにより理解可能な言語パターンとして耳に入ってくる。こちらの話も同様にポリオーラルによって理解可能なパターンの言語に変換されて相手の耳に届く。
 これにより人々の結び付きのギャップは最小化された。だが『銀河の叡智』もその役割を終えたかの如く、ある日を境に発現しなくなったのだった。

 

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 Report 2 連邦の発展

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