4.1. Report 1 七聖と叡智

Record 4 インプリントテクノロジー

 連邦ではポータバインドが《虚栄の星》から広がりを見せた事に少なからず衝撃を受けた。
 そこで当時の連邦議長ヴェニヤン・パンガは議会決議を盾に、タッチストーン社の技術と主だった技術者たちを強引に移住させ、《巨大な星》のモータータウンに連邦と民間の共同の研究機関、『フェデラルラボ』を設立した。

 この接収行為により、タッチストーン社は経営が立ちいかなくなり、数年後に表舞台から姿を消した。
 《虚栄の星》の人間、特に企業経営者たちが長きに渡って連邦を嫌うのはこの事件が契機だったと言われている。

 
 話を戻そう。
 ポータバインドの問題は認証にあった。当人に成り済まして悪事を働くケースが後を絶たなかったのだ。
 フェデラルラボが苦労に苦労を重ね四百年以上かけて開発したのは連邦員一人一人の腕に認証情報その他を印字する技術だった。
 これは認証に名を借りた連邦民の番号登録制ではないかと批判する者もいたが、それはあながち間違いではなかった。
 連邦員だけが『銀河の叡智』の恩恵に預かる権利を得る事ができる、という連邦の確固とした意思表示だったのだ。
 もっとも連邦外のネットワークもその後続々と誕生した。例えばPNと呼ばれる『プ ライヴェートネットワーク』は定住する星を持たない商人の間のネットワークとして設立され、それ以外にもホスピタルネットワークやミンストレルネットワーク、それに連邦の把握していないアンダーグラウンドのネットワークがインプリント技術によって構築されていった。

 

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