3.7. Story 1 叡智の光

2 連邦設立宣言

 《鉄の星》プラの『輝きの宮』、王の間でデルギウスたちはマザーから説明を受けた。
「いいかい。次にあんたがするのは銀河連邦の設立さ。上手い具合に止水もここにいる。《武の星》とあたしのいる《巨大な星》が後見人を務めるさ」
「デルギウス殿。あのような奇蹟を見せられた後となってはいよいよ貴殿らに頭が上がらない。我らや《将の星》で良ければ喜んで協力させて頂くぞ」
「ありがたき幸せ。しかし銀河連邦とは何を為すための組織でしょう?」
「『銀河の叡智』を維持、発展させる事さ。あんたたちにはすでに『ダークエナジー航法』という叡智があるだろう。当面はそれを使って他の星を連邦に引き入れるんだね」
「うーむ、何となくわかってきました。星と星とを結びつける事、速いシップは誰でも乗りこなせるというものではありません。誰もが簡単につながる事、それこそが『銀河の叡智』のような気が致します」
「その通りだよ。そのための学校や研究機関を用意する。そうすれば様々な叡智が実現していくだろうから」
「わかりました。早速、《巨大な星》に教育機関を作りましょう。銀河連邦大学です」
「《七聖の座》にもね」
「……それはどこですか?」
「ちょっと前までの《砂礫の星》さ。あそこが連邦の中心だって言ったろ」
「なるほど」
「とにかく、あんたたち『七聖』がシップで星を回って連邦に加盟してくれる星を増やすんだね」
「七聖?」
「光の儀式を行った七人だよ。名前は結構大事だよ」
「マザーは思いのほか戦略家ですな」
「プロデューサーって言いなよ」

 
 あっという間に数か月が過ぎた。デルギウスは《七聖の座》の都市開発に忙殺された。どうやら人が快適に暮らせる環境なのは惑星デルギウスとその外を回る三つの惑星、リリア、兆明、ノカーノのようだった。中でもデルギウスは温暖な気候で陽射しも適度だった。デルギウスは自分の名を付けられたその惑星に一大都市を造る事を決意した。

 久しぶりに《鉄の星》に戻ると他の七聖たちも揃っていた。この日はディーティウスの《銀の星》の正式なお披露目の日だった。
「やあ、皆、連邦加盟の方はどうだい?」
「私とリリアは《花の星》からの協力を取り付けた」
 クシャーナが真っ先に口を開いた。
「おいらとファンボデレンは《商人の星》だ」
 メドゥキも得意そうに言った。
「私と兆明は《オアシスの星》」とノカーノも言った。
「それは皆、すごいな。マザーのおっしゃった通り、名前は大事だな――ところでクシャーナ。《青の星》は?」
「いや、あの星は文明が発達していないから無理だな」
「……そうか、わかった。では《銀の星》に向かおう」

 

 この時点で銀河連邦に加盟、或いは加盟の意志を示したのは以下の星だった。

・七聖の座
・鉄の星
・巨大な星
・武の星
・将の星
・牧童の星
・森の星
・花の星
・商人の星
・オアシスの星

 

 これに今日から《銀の星》が加わった。《虚栄の星》、兆明が住む《念の星》、《獣の星》、《神秘の星》、《魔王の星》、《享楽の星》は距離が離れているため、加盟は見送りとなった。星間を結ぶネットワークがない事には到底連携など取れない現状を鑑みての結果であった。

 
「まずは良しとしないとな。人々が繋がりさえすれば遠い星も問題なくなるのだが」
「兄貴の方はどんな塩梅だ?」とメドゥキが尋ねた。
「ああ、《七聖の座》の建築計画は作成した。明日にでも《巨大な星》で大学の設置の話を進めようと思っている」
「兄貴も忙しいな。まあ、おいらたちも《七聖の座》の都市建築は手伝うからよ」
「すまないな」

 
 《銀の星》での式典は盛大だった。ディーティウスは完成したばかりの都市をディーティウスヴィルと名付け、王宮を『煌きの宮』と呼んだ。自らはディーティウス・ブライトピアと名乗る事を宣言し、ここにブライトピア家が始まった。

 
 翌日、デルギウスは一人で《巨大な星》に向けて出発した。その途中で立ち寄ったのは隕石群に囲まれた《守りの星》だった。
 デルギウスの顔を覚えていた翼の生えた兵士が言った。
「今日は何の用だ?」
「ルンビア殿は?」
「おらん。だがグラバチ様が戻っておいでだ。詳しい話を聞くが良い」

 デルギウスが案内されて大樹の下に行くとそこには険しい顔付きの白き翼の持ち主が立っていた。
「ルンビアの知り合いでなかったら殺している。ルンビアの事を聞きたいのだろう」
「はい。ここにはいらっしゃらないという事ですがどちらへ?」
「もう帰ってこない。突然に姿を隠された。きっと母なる大自然の下に向かわれたのだ」
「申し上げたい事があったのですが……一足違いでした。残念です」
「なら言ってみるが良い。思いは必ずやルンビアに届くであろう」
「はい。《虚栄の星》に参りました。オストドルフ王、そして『嘘つきの村』のノコベリリスの子孫、ツヴォナッツはルンビア様を忘れておりません。その証拠に都市計画は着々と進行し、現在はゴシック期が開始されておりました」
 デルギウスは空に向かって話しかけた。

「話はそれだけか――こちらからもお前に聞きたい事がある。最近、この銀河で大きな変化があった。お前たちは何をしようとしているのか?」
「『銀河の叡智』の発現にございます」
「叡智だと……笑わせるな。持たざる者だけが楽になり、三界がますます惨めになる、それのどこが叡智だ」
「……ではお尋ね致します。協力を求めれば手を繋いで下さいますか?」
「それは無理だ」と言って、グラバチは口の端を歪めてにやりと笑った。「我々は長い間、持たざる者に騙され続けた。俄かに信じろと言うのは無理だ。百年、いや千年かけて信頼を勝ち取るのだな」
「……」
「もっともお前の孫子の代になっても、その殊勝な心構えが続いていればだが――デルギウスとやら。お手並み拝見といこうか。実は一つ頼まれて欲しい事がある」
「何でしょう」
「これはリーバルンの、そしてルンビアの意志だ。これを」と言って、グラバチは大きな石を見せた。「《巨大な星》のニカ台地に埋めてきてはくれんか」
「これは?」
「理由は聞かないでもらいたい。聞けばお前にも災いが降りかかる」
「……わかりました。仰せの通りに致しましょう」

 
 デルギウスは《巨大な星》に到着した。最初にグラバチの用件を済ませた後、マザーの口利きをもらい、アンフィテアトルに連邦大学を建設する事を決定し、そのまま《鉄の星》に戻った。
 これ以降、デルギウスが旅に出る事はなくなった。

 

別ウインドウが開きます

 Chapter 8 新たなる旅

先頭に戻る