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4 《長老の星》
ロッキとウシュケーが周辺の星に出向き、熱心な布教活動を行った事によりバルジ教の教えは爆発的に広まった。
ある日、ウシュケーは尋ねた。
「ロッキ、この星と同じ星団にある大きな星、あそこには布教に行かなくていいのかい?」
「大きな星、ああ、《長老の星》か。止めとけ、止めとけ。あんな化けもんの住む星、行ったって碌な目に遭わねえぞ」
「化け物……ロッキが言うくらいだからよほどだね?」
「冗談じゃねえんだよ。あそこではよ、巨人が歩き回っているんだ」
「巨人……?」
「おう、何だよ、知り合いでもいるのか」
「ロッキ、次の星団にはあなた一人で行ってくれないか。私は《長老の星》に行ってみるから」
「いいけどよ、バルジ教の教主に死なれちゃ困るんだ。無茶はすんじゃねえぞ」
「大丈夫、シーホも連れて行くし、いざとなれば――」
「おいおい、教主が拳を振るうってのはいただけねえぜ」
ウシュケーはシーホを連れてシップで《長老の星》に向かった。
大陸には見渡す限りの平原と熱帯雨林が広がっていて、人の気配は感じられなかった。
その時、シーホが前方にありえない物を見つけたらしく、ウシュケーの肘を突いた。ウシュケーも気配を感じ取ったようで一つ頷いた。
「ウシュケー様……あれは、あれは、トイサルではありませんか?」
「いや、そんなはずはない。彼は《古の世界》と運命を共にしたはずだ」
シーホが指差すはるか先には巨人たちの姿が陽炎のように揺らめいていた。
「近づいてみますか?」
「止めておこう。強烈な敵意を感じる――ロッキの言う通り、どうやらここは来てはいけない場所のようだ」
ウシュケーたちはシップに戻った。
「トイサル……忘れられた『八回目の世界』の住人」
その後もバルジ教の教えは付近の星に次々と広がっていった。
ある日、ウシュケーは病に倒れたロッキの枕元に座っていた。
「……ウシュケーか。ざまあねえなあ。おいらもいよいよ年貢の納め時だ」
「ロッキ」
「なあ、おいらが死んだらどこの教会に埋葬してくれるんだい?」
「もちろん『悪の教会』に決まっているじゃないか」
「へへへ、よくわかってらあ。おいらみてえにたくさんの人を殺してきた人間はそこ以外に行く場所はねえやな」
「ロッキ、今までありがとう」
「……礼を言うのはこっちだ。おいらみてえに血で汚れた奴だって、どんな聖人だって、向かう場所は『死者の国』なんだろ?」
「ああ、私たち造られし者は皆、『死者の国』で転生の時を待つ。ナインライブズの前では、善も悪もないんだ」
「へへへ。安心したぜ――じゃあな」
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