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4 聖なる台地
ニライたちが聖なる台地に移り住んでからおよそ五千昼夜の時が流れた。ロアランドのズーテマはある朝、冷たくなっているのを町の人に発見され、その後、アーノルドが入植者でありながら二つの町の指導者になった。
ミュアは美しく成長した。町の男たちはこぞって求婚したが、ミュアは誰とも付き合おうとはしなかった。
ある日、ノイロアランドに使いでやってきたミュアはアーノルドの家を訪ねた。
「やあ、ミュア。相変わらず美しいね」
「まあ、アーノルドさんったら」
「噂だと町の男たちの求婚を全部断っているらしいね。もしかすると君はまだ子供の時の」
「……最近ではあちらからの連絡はないのですか?」
「ああ、気ままに暮らしているんじゃないかな。初めのうちは足りない物があったりして、何度か山を降りて来られていたが、元々気候が良く、楽園のような場所らしい。ここまで降りて来る必要はないんじゃないかな」
「……そうですか」
ミュアはアーノルドの家を出た。ノイロアランドの町は今日も活気に満ちている。何だか切ない気持ちになって涙が出そうになった。町の角で立ち止まっていると、背後から声をかけられた。
「お嬢さん、そんな顔して歩いていると幸せが逃げていくよ」
ミュアは物憂げに振り返った。初めは何も理解できず、次に驚き、最後には笑顔に変わった。
「ミュア、迎えに来たよ」
いつの日からか、この星は《流浪の星》と呼ばれ、聖なる台地には『台地の民』と呼ばれる特殊な能力を持った人々が暮らす、と言われるようになった。
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