1.4. Story 1 咆哮

2 龍との対話

 リーバルンは黄龍たちを『世界の中心亭』に連れていった。
 いつもの二階の個室に入った時に黄龍が妙な事を口走った。
「ほほぉ、これは珍しいのぉ。『八回目の世界』の生き残りが経営する店か」
 全員が黄龍の言葉に首を捻っていると、突然に雷獣がエクシロンの盾から飛び出した。
「黄龍様、ごぶさたしてます。雷獣です」
「久しぶりじゃな。こりゃあまたいい隠れ場所を見つけたもんだ。全く気付かなかったぞ」
「はい。サフィやエクシロンがおれを助けてくれました」

 にこにこと笑っている黄龍にエクシロンが尋ねた。
「なあ、黄龍さんよ。この雷獣っていうのは何者なんだい。どう見たって他の生き物とは違わあ」
「エクシロンとやら。今のお主たちに言っても多分わからんだろうが、今いるこの世界は『九回目の世界』と呼ばれておる。それに対してわしら龍や雷獣のような聖獣は『八回目の世界』、『七回目の世界』、『六回目の世界』、そういった以前の世界の生き残りなんじゃ」
「ちっともわかんねえよ。で、その聖獣ってのは他にもいるのかい?」
「ははは、見かけによらず優しい男じゃな。雷獣に仲間がいないのでは淋しかろう、か……うむ、他にもいるはずじゃ。例えば雷獣の双子の弟の雨を降らす雨虎、巨大な亀のゲンキ、空を翔るキリン……」

「黄龍様」とサフィが質問をした。「『聖獣は長じて龍になる』、という事はないのでしょうか?」
「以前の世界ではそういう成長の仕方もあったようじゃが、今はすっかり別物、たとえ雷獣がどんなに長生きしても龍にはならんのではないかな。ただ、それがいつ又変わるかは気まぐれな羅漢次第じゃな」

 そこにトイサルが料理を運んできた。
「あんた、『八回目の世界』の生き残りなんだって?」と白龍が無邪気に尋ねた。
「ちっ、おしゃべりなじじいだぜ」
 トイサルは吐き捨てるように言い、自分の席にどっかと腰を降ろした。

 
「サフィ、お主の計画はどんなものじゃ?」
 黄龍に尋ねられ、サフィは大公のくれたシップの設計図に従って世界中がシップ建造を行っていると答えた。
「わしの予想と違ったな。『三界常に争い、平和の訪れる事なし』と思っていたが」
「それについては」とリーバルンが口を開いた。「サフィの警告のおかげで三界が協力しております」
「皮肉なもんじゃな。危機が目前に迫ってようやくまとまるとは。まあ、もっと前に和解していたとしてもどうなっていたかは創造主の意思一つじゃ」
「はい。しかしやっと次の世代に渡せる何かにたどり着いたと思っております。それは他の王たちも同じ考えのはずです」
「本当に皮肉な事じゃ……まあ、せいぜいお主らの命を懸けた思いのために協力させてもらうとするか。ところでお主たち、もう脱出先は見つけたのか?」

 
「それが」
 ルンビアが口を開いた。
「まだなんです。ようやく他の星の姿を発見しましたけど、ぼくのような翼のある者でも何日もかかってしまいます。これを普通の人間が行うと思うと……」
「ほっほっほ。簡単な話じゃ。それはシップの性能が完全ではないからじゃ。どれ、シップの置き場所はこの近くか」

「黄龍様」とサフィが尋ねた。「シップについてお詳しいのですか?」
「以前の世界や他の星でもシップを見てきておるからな。さ、早いとこ案内してもらおうかの」

 

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