万物誌


銀河の創造

最初にレアが次元を決めた
オシュガンナシュが空間を広げ、ギーギがその空間を繋いだ
エニクは時間を決め、そしてバノコが大地を造った
グモは物質の大きさを定め、アーナトスリが箱庭にエネルギーを与え、ウムナイとウムノイが箱庭に気を満たした

ウムノイの気からウルトマという龍とアウロという精霊が生まれ、ジュカは彼らに永遠とも思える寿命を与え、チエラドンナが「運命」と呼ばれる生命の法則を与えた
ウムナイの気からモンリュトルという背中に翼の生えた者、ニワワという水の中で暮らすための鰓と鰭を持つ者、ヒルという土の中で暮らすための鉤爪を持つ者が生まれ、ジュカとチエラドンナは彼らに少し短めの限りある寿命を授けた
最後にマーという何も持たない者が生まれ、ジュカとチエラドンナはこの『持たざる者』にとても短い寿命を与えた

こうして生まれた生命のため、ワンデライは終着点であり新たな出発点でもある『死者の国』と呼ばれる転生の地を設けた


銀河の終焉

これまでに八回、この箱庭は創造と破壊を繰り返している

終了が決定すると、ワンデライは次の世界に残したい命を救い上げる 
その際に次の世界での役割を説明し、前の世界の記憶を持ち続けるかどうかを確認する 【三回目の世界以降】 

終末の日を迎えると、空は様々な色に染まり、箱庭の中心から湧き上がった波動は静かに銀河を包み込み、全てが消滅する 【一回目から七回目の世界】

但し八回目の世界の終焉は様相を異にした
空は赤く染まり、全ての命が最後の一体になるまで殺し合い、残った最後の一体も箱庭と共に消滅した
ワンデライによって次の世界での役割を任されていた巨人はこの結果に激しく拒否反応を示し、それが原因で九回目の世界での創造主に選ばれなかったという

因みに八回目の世界で最後まで生き残ったのはワンガミラの戦士だったと言われている


繰り返される創造と破壊

最初の世界

創造主は自らに似せた生き物を造り出した
だが、彼らに一切の知能を持たせなかった
当然、この愚かな人形は何の進歩も起こせない
創造主は彼らの暦で三日待ったが、早々とこの世界をあきらめ、廃止した

二回目の世界

創造主は非常に単純な細胞からなる生き物を造り出した
だが、創造主はその単調さにすぐに飽きた
同じような実験は他の箱庭ですでに行われていて、今更何の発見も無い
一週間待って、この世界を廃止した

三回目の世界

創造主は自らが思い描く空想の生き物を多く造り出した
龍、精霊、聖獣、こういった生き物はこの時に造られた存在である
この世界は楽しく、被創造物の優秀さは満足いくものだった
だがArhatギーギが『これは何のための実験だ?』という根本的な疑問を投げかけた事により、終了する

四回目の世界

創造主は、前の世界で優秀だった龍と精霊だけの世界を造り上げる
龍の持つ完璧な階級制と精霊の持つ完璧な網羅性により、世界は非の打ちどころの無いものとなる
だがArhatチエラドンナが『面白くない』とけちをつけたために、この世界も終了する

五回目の世界

創造主は原点に立ち返る
『最初の世界』での教訓を生かし、知能はあるが、どこか欠けている者たちを次々に造り出す
『胸穿族』や『大足』や足が前後逆に付いた者はこの世界で造られた
だがArhatバノコの『何かが違う』という一言により、終了

六回目の世界

五回目の世界は『弱き者』だけの世界だったため緊張感に欠けたと判断し、前の世界の住人に加えて『強き者』を造る
又この世界で、ワンガミラ、『沼に棲む者』が誕生する
だが『強き者』は一方的に『弱き者』を殺戮し、Arhatワンデライが『見るに堪えない』と言った事により、終了

七回目の世界

『弱き者』と『強き者』の対立の構図に『守る者』の存在を加える
『守る者』とは巨人の事である
この世界は適度の緊張と平和のバランスに取れたものとなるが、Arhatエニクの『本当に見たいのは弱い者が自らの力で何かを成し遂げる事ではないか』という提案を受け、終了

八回目の世界

『弱き者』は極力創造主に似せた持たざる者となる
彼らは知能を持ち、火を用い、道具を使う事によって外敵に対応する事が可能となった
『強き者』、『守る者』は継続して世界に参加
これが最善かと思われたが……

実験の途中でその存在が明らかとなった、箱庭に蓄積し続けた澱、それが全てを変えた

エニク「澱の発生原因だけど、これまでの七回の箱庭のリセットの際に注入したエネルギーを開放しなかったせいのようね」
バノコ「ではアーナトスリの怠慢のせいか」
アーナトスリ「冗談言うな。おれはこれっぽっちもさぼっちゃいねえぞ。単なる偶然だ」
エニク「故意にせよ、偶然にせよ、このエネルギーが箱庭に与える影響には興味あるわ」

創造主たちは指導教官のジノーラに相談をし、ジノーラも又、興味を持った
直ちに評議会に新たな研究テーマとして『箱庭における膨大なエネルギーの発現の観察』を提示し、承認を得た

ジノーラ「無事許可ももらえたし、このまま実験を続けるかね?」
エニク「どうせならこのテーマに特化した九回目の新しい世界でやりたいわ」
ジノーラ「ふむ、全員同じ意見のようだね。では八回目の世界は終わらせるという事でいいね」
ギーギ「……先生。それについてアイデアがあるんだが」
ジノーラ「何だね」
ギーギ「……八回目の世界の住人たちにはとことん殺し合いをしてもらう」
エニク「何を言い出すの?」
ギーギ「……最後まで聞いてくれ。殺し合いの果てに最後まで立っていた者、それこそが銀河最強だ。こいつに次の世界の切り札になってもらう」
バノコ「切り札?」
ギーギ「この巨大なエネルギーが我々にも制御できなかったらどうする。そのための対抗手段だ」

 
……かくして、八回目の世界は壮絶な最後を迎えた

九回目の世界(現在)

持たざる者を支配する『空を翔る者』、『水に棲む者』、『地に潜る者』が造り出される
世界を支配する鍵は龍と精霊
龍と精霊が誰を守護するか、それにより世界は如何様にも転がる
世界を支配するために争う不確実性こそが……

ジノーラ「君たち、ところで新しい世界における巨大なエネルギーの発現、何か良い呼び名はないかな?」
バノコ「それについてはもう、全員一致で考えてあるんですよ――ナインライブズ、どうですか?」

 
……不確実性こそがナインライブズ発現の決め手となるはずである

 

万物誌本編

 

空を翔る者
Flyers
一般的には背中に翼を持ち、空を飛ぶ者を指す
背中の翼には、鳥のような羽毛に包まれたものや蝙蝠のようなものまで様々な形状がある
開放的な空間を好み、天井の低い部屋といった閉所を嫌う性質があると言われるが、当然、全てに当てはまる事ではない
水に棲む者
Acuatics
一般的には手指の間に水かきを持ち、鰭を持つと言われているが、全てに当てはまる訳ではない
持たざる者と同様の姿をした者から、魚類、甲殻類に近い者、軟体動物、棘皮動物、刺胞動物、そこには生物の進化のツリーの多くが含まれる
多様な水に棲む者の共通点は、水中でも生活できるほどの無酸素耐性を持っている事である
水の中では快適に暮らせるが、陸上に上がるとそうではないという性質も、全てに該当する訳ではない
地に潜る者
Bottomers
鋭い鉤爪を持ち、地中に暮らすのはほんの一握りに過ぎない
通常の持たざる者とほとんど変わらぬ外見の者もいれば、モグラのような者もいる
中でも、トラやクマの姿をした獣人も地に潜る者に近しいという点は特筆に値する
この事からも陽の光を浴びるのが苦手というのが迷信なのは明白で、共通的な特徴は立体の認識にやや難があるという事だと言える
例えば、建物の高層階での活動、又、垂直移動機関等での高層階への移動に苦痛を感じる地に潜る者は多いと聞く
持たざる者
Noholders
その名の通り、翼も鰭も鉤爪も持たない種族
空中での移動、水中での生活、地中への潜行といった能力を持たない代わりに、閉所、水分の枯渇、立体認識といった欠点も持ち合わせていない
創造主が自らに最も似せて造った種族であるが、創造主の持つ、時空を超越し、自在に気を産み出し、エネルギーを制御する能力は発現していない
矛盾する言い方だが、能力を持った持たざる者が存在するならば、この銀河の支配者となる事も可能である
そういった意味で、最も可能性を感じさせる種族ではある
精霊
Spirit
自然から生まれ、自然に還る者たち
龍ほど長命ではないが、かなり長い間、この世界に留まる者も多い
外見は極めて多様で、一見すると精霊とは気付かない場合もある
例えばグレイシャーという氷の精霊は氷でできた宮殿の姿をしていた
精霊の性質は、物事に束縛されるのを嫌い、自由を好むと言われている
属性精霊には属性がある
自然の持つ風化地水のいずれかを備えた形で世に現れるとされている
かつての世界、そして《古の世界》の頃までは、単独の属性で出現するのが普通だったが、その後、複数の属性を持った精霊しか誕生しなくなった
すなわち、風と火、風と水、火と地、水と地の組み合わせのいずれかである
金の属性風化地水に加えて金の属性があるが、この属性の精霊は、精霊の祖、アウロ以外に出現していない

Dragon
あらゆる被創造物の中で最も強く、勇敢な種族
かつての世界では『聖獣、長じて龍となる』事があったが、その完璧さ故に、現在の世界では子孫を増やす事も、死亡する事もないと言われ、半ば伝説の存在となっている
子孫については、龍の祖、ウルトマが水の精霊と契り、順天という子を設けたのが唯一の例外である
ディヴァイン現存する龍族の頂点に位置する
龍の祖、ウルトマの意志を継ぎ、完全なる秩序を打ち立てた
人と変わらぬ体に龍の顔があり、『聖なる槍』と『聖なる盾』を手にした戦士の姿をしている
黄龍聖なる龍の秩序のリーダー
『地』の属性を司る
普段は老人の姿をしているが、一度変身すれば巨大な黄金の龍へと姿を変える
黒龍邪悪な龍の秩序のリーダー
『死』を司る
普段は漆黒の鎧兜に身を包んだ戦士の姿をしているが、変身すると黒いドラゴンへと姿を変える
全身から発する邪気で全てを時空の彼方へと吹き飛ばす
赤龍聖なる龍
『火』を司る
エクシロンを似せた男性の姿をしているが、変身すれば赤いドラゴンへと姿を変える
青龍聖なる龍
『風』を司る
サフィに良く似た辮髪の青年の姿をしているが、変身すれば青い蛟竜へと姿を変える
白龍聖なる龍
『水』を司る
ルンビアに似せた少年の姿をしているが、変身すれば白い蛟竜へと姿を変える
グリュンカグリュンカとは古語で『無限の瞬き』という意味
邪悪なる龍で『呪い』を司る
体を無数の目に覆われた異形のドラゴンで、目から発する邪気により呪いを及ぼす
ゾゾ・ン・ジアゾゾ・ン・ジアとは『浮遊する悪魔』という意味
邪悪なる龍で『疫病』を司る
風船のような体をして、空中に漂い、無数の子供の竜を使って疫病をばら撒く
バトンデーグバトンデーグとは『大きな角』という意味
邪悪なる龍で『破壊』を司る
全身を固い殻に包み、サイのような大きな角であらゆるものを破壊する
聖獣聖獣とは過去の世界において造り出された者たち
性格は楽天的で、他人に媚びず、我が道を往く
雷獣、雨虎、ゲンキ、キリン、ホウオウといったバリエーションに富んだ姿をしているのは、創造主のばらばらのイメージを具現化したためである
異世界獣聖獣に似ているが、創造主ワンデライが『レースロトル銀河』滅亡の際に、そこの創造主から譲り受けた者たちを指す場合が多い
(因みに、『レースロトル銀河』はその後、『真・レースロトル銀河』として新たに創造されたが、征服王ユンカーによって簒奪される)
ヌエ、邪蛇、ウェットボア、テグスター、ソーンビー、ガイサイといった曲者が存在すると言われている
巨人その名の通り、大きな人型の種族で身の丈は3メートルから5メートルある
現在の世界で龍や精霊と同様に人々を主導する立場を期待されたが、その前の八回目の世界の最後のあり方に疑問を抱き、表舞台から姿を消した
八回目の世界では『守る者』と呼ばれ、『弱き者』を保護していた
九回目の世界では《長老の星》で暮らしていると言う
沼地に住む人別名を『ワンガミラ』というトカゲの顔をした人
勇猛で、武術に長けた者が多い
自分たちを『ワンガミラ』、他を『バリニアラ』と呼ぶ事から、ワンガミラ=『沼地に住む人』という意味と思われていたが、近年の研究でワンガミラ=『強き者』、バリニアラ=『弱き者』ではないかという解釈が起こっている
九回目の世界では、《幻惑の星》の沼地に暮らしている
胸穿族胸に大きな穴の開いた人
性格は温厚で、争いを好まず、頭脳明晰な事で知られる
九回目の世界では、《霧の星》で静かに暮らしている
大足以前の世界に存在していた巨大な足を持つ人
今の世界では、その存在は報告されていない
獣人その名の通り、獣の顔や体を持った人
その多くは《獣の星》に暮らすと言う

 

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