1 エピローグ

 2 ジウランのエピローグ

1 ラーマシタラ

 男は興奮していた。
 銀河の覇権を巡る最も重要な戦いをこの目にしかと焼き付け、しかも映像に記録する事ができたのだ。
 勝敗など二の次で、藪小路が二人の青年に消滅させられていく様は荘厳ですらあった。
 一刻も早くこの喜びを誰かと共有したかった。
 《古城の星》に戻るか

 男は機材をまとめて、大聖堂の裏口に向かったが、警察がびっちりと包囲網を敷いているのに気付いた。
 仕方ない――いつも通り、偽りの映像を見せてこの場をやり過ごすか
 男は意気揚々と裏口を抜けた。

 
 講堂の前の石段でぐったりとして座り込むデズモンドの下に再びケイジがやってきた。
「微かな人の気配がしたのであの小さな建物の中を見てきた。一人はすでに事切れていたが、もう一人は毒を吸い込んだだけでまだ息があった。仲間割れのようだな」
「……ムーちゃんだ。助けてやりてえな」
「処置を誤らなければ助かるだろう」
「――おい、ケイジ。肩を貸してくれよ。そろそろ大吾に突入していいぞ、と知らせたいんだ」
 デズモンドは気配を消したケイジの肩につかまり、のろのろと敷地の外に向かって歩き出した。

 
 夜が明けようとする中、蒲田大吾も忙しく動き回っていた。裏口から逃走しようとした不審者を捕えたとの連絡を受け、坂道を下り、広い道路側に駆け付けた。
 捕えられた男を見て質問を開始した。
「お名前は?」
「設楽羅馬と申します」
「なるほど」

「何故、私が拘束されないといけないのです。私はこの聖堂の責任者ですよ」
「ならば何故、こそこそと裏口から逃げ出すような真似をなさったのですか?」
「それは……暴漢たちがこの聖堂を襲ったのです。そうですとも。私を拘束するより暴漢たちをどうにかなさるのが警察のお勤めではありませんか?」
「ごもっともです。ですがあなたの身の安全を図らないといけませんからね」
「おお、保護して下さいますか」

「おい、誰かこの方を安全な場所に――いや、直ちに旧連邦軍のチコ将軍に連絡して引き取ってもらえ。その辺におられるはずだ」
「……はっ、何をおっしゃっているのですか?」
「観念しろよ。ラーマシタラ。《エテルの都》でのバルジ教枢機卿殺人教唆の罪で拘束させてもらうぞ」
「何かの間違いです。聖職者たる私がそのような犯罪など」
「年貢の納め時だな。後ろ盾がやられそうになったんで我先に逃げ出したんだろ?」
「おっしゃる意味が……」
「何も知らないと思っているのか。私はこれでも文月とは何十年来の付き合いだ。お前はバルジ教とは何の縁もないチンピラ。直接手を下していないが、ローデンタイトの戦士を匿い、唆して枢機卿を殺させた」
「……もしも……それが真実だったとしても、私はこの星に来てからは一切、犯罪に手を染めておりません」
「自白したも同じだな。もうすぐチコ将軍がやってくる。話はそこでゆっくりとするんだな」

 がっくりとうなだれるラーマシタラを残し、大吾が正門に戻りかけようとすると、一人の警官が息を切らして坂を下りてくるのに出くわした。
 大吾は警官から報告を受け、全員に突入宣言を出した。

 

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