この町を訪ねるのも久しぶりだ。
いつも少し煙ったような空気が漂う静かな町並み、私はどれくらいの間、ここの学び舎で教鞭を取っただろう。
退官した時にはこのような形で再訪するとは思ってもいなかった。やはり予想外の出来事が起こる人生ほど楽しいものはない。
彼らはどこにいるのか。学生たちのたまり場のあのカフェか、それともぐっと真面目に『星読む人の塔』か。
学内にいる事はないはずだ。何しろ融通の利かない教授陣も多い。実験をほったらかしにしている所を見咎められたらどんな叱責を受けるかもしれない。ましてや被創造物に追い出された事がばれれば、頭の固い教授は卒倒しかねない。
彼らの居場所はすぐに知れた。やはりあのカフェだった。私も学生時代に戻って一杯のお茶で何時間も討論を交わしたくなってきた。
年季の入ったカフェの扉が見えてきた。
さて、ワンデライ君との約束を果たす時だ。
別ウインドウが開きます |