ジウランの航海日誌 (5)

 Chapter 7 復活する者

20XX.8.XX 孤独な海賊

 ゼクトの手配のおかげで《商人の星》の近くの小惑星でコメッティーノに会える事になった。
 ダレンのレストランで緊張して待っているとじいちゃんが話しかけた。
「どうした、ジウラン。ははーん、小惑星上の酸素耐性を心配してるんだな。それが克服できないようじゃあ、《愚者の星》に行くのは土台無理だな」
 そんな事じゃなくて、じいちゃんはお金を持ってるのか尋ねた。
「安心しろ。出発の前に釉斎がたんまりと餞別をくれた」

 
 食事が終わるとゼクトが迎えにきた。
「準備はいいか?」
 ゼクトがシップに乗り込んで待ち合わせ場所の小惑星を目指した。
 岩だらけの星の上にはすでにコメッティーノの姿があった。
 もしゃもしゃの髪の毛を頭の後ろで無操作に束ねた『クロニクル』の通りの風体だった。

 
「ゼクト・ファンデザンデ。どういう風の吹き回しだ?」
「ふん、出くわさないようにスパイを送り込んでいたろう。まあ、そのおかげでこうして会えたが」
「お前とやり合うと商売上がったりでな――で今日は何の用だ?まさか決着をつけようってのか」
「血の気が多いな。お前に会いたいという人間を連れてきたのだ」
「――こちらのお三人さんか。商人にも海賊にも見えねえなあ」
「わしらは《青の星》から来たんだ。わしはデズモンド、孫のジウラン、その嫁の美夜だ」
「ふーん、遠い所からご苦労なこった」
「なあ、コメッティーノ。《青の星》と聞いて思い当たる事はないか?」
「ねえなあ。行ったって仕事にゃならねえし、知り合いもいねえ」
「別に現実じゃなくていいんだよ――例えば夢とかな」
「……気味が悪いな、おめえ。何でおれの夢を知ってんだよ」
「コメッティーノ」とゼクトが助け舟を出した。「自分もそうだった。実はこういう事らしい」

 
 ゼクトがコメッティーノに事実の世界の話をした。
「……つまりおれは銀河連邦の議長って訳か。で、ムスクーリ家の名花を嫁にしてる。そいつはゴキゲンだな」
「その事実の世界を取り戻すために協力してもらいたいんだよ」とじいちゃんが言った。
「うーん、おれは今の海賊のまんまでも気楽でいいんだけどなあ」
「そう言うなよ。独裁者銀河覇王の支配する銀河は住みにくいぜ」
「……困りもんだよな。事実の世界だとそいつはどうなってるんだよ?」
「同じく銀河覇王だが、慈愛溢れる男だ。何の心配もない」
「――で、差し当たって何をすりゃいいんだ?」
「お、協力してくれんのか」
「退屈しのげるなら乗ってやるぜ。つまんねえ仕事は願い下げだ」
「それならとびきり面白い仕事だ――《愚者の星》に潜入して『鎮山の剣』を手に入れる」
「――《愚者の星》だ?そりゃあ面白いが、そんな名前のお宝は聞いた事ねえな」
「ノカーノの遺物って言った方が早いかな。王宮の奥深くに眠ってるんだよ」
「ふふん、冒険家みてえで楽しそうだな」
「おい、コメッティーノ」とゼクトが口を挟んだ。「イワクの廃墟には『怨嗟の毒樹』がいるぞ」
「いいじゃねえか。おれとお前でやっちまおうぜ」
「もちろん、そのつもりだ」
「へへへ。おれもお前もそっちの世界じゃあ、七武神っていう銀河の英雄らしいじゃねえか。イワクの廃墟じゃあ舞台が小さすぎるぜ」
「その意気だ。お二人さん、よろしく頼むよ」とじいちゃんが言った。

「七武神で思い出したんだけどな」とコメッティーノが言った。「夢の中のリンがいないのはわかった。だけど後の奴らはどうしてんだ?」
「《鉄の星》のリチャード・センテニアの事を言ってるのか?」
 それを聞いてコメッティーノもゼクトも何故かにやにやと笑った。
「デズモンド、あんたがどうやってあいつを説得するか、おれたちも見にいくぜ」
「――何だか訳ありっぽいな。《鉄の星》にはこの後、《オアシスの星》に里帰りしてから寄る予定だ」
「デズモンド、《オアシスの星》の生まれなのか?」とコメッティーノが大声を上げた。
「何だ、コメッティーノ、知ってるのか?」
「ああ、ゼクトの乗ってるシップ、メドゥキ・ギルドのシップ、それにマノア家の旗のついたシップは襲わねえようにしてるんだ。あのばあさん、うるさくってしょうがねえからな」
「あのばあさんってエカテリンか。まだ生きていやがるんだ」
「元気も元気。なっ、ゼクト」
「うむ。機嫌を損ねたらこの辺りで商売は続けられない。そうなると娘のアダンに頼み込んでエカテリンの怒りを解いてもらわないとならない」
「ふーん、そうかい。楽しい里帰りになりそうだが、その前に『鎮山の剣』だ」
「じゃあ早速、行こうじゃねえか」

 

登場人物:ジウランの航海日誌

 

 
Name

Family Name
解説
Description
ジュネパラディス《花の星》の女王
ゼクトファンデザンデ《商人の星》の商船団のボディーガード
コメッティーノ盗賊
ハルナータ《賢者の星》の最後の王
アダンマノア《オアシスの星》の指導者
エカテリンマノアアダンの母
リチャードセンテニア《鉄の星》の王
ニナフォルスト《巨大な星》の舞台女優
ジェニーアルバラード《巨大な星》の舞台女優
《巨大な星》、『隠れ里』の当主
陸天《念の星》の修行僧
ファランドール《獣の星》の王
ミナモ《獣の星》の女王
ヌニェス《獣の星》の王
マフリセンテニアヌニェスの妻
公孫転地《武の星》の指導者
公孫水牙転地の子
ミミィ《武の星》の客分
王先生《武の星》の客分
ランドスライド《精霊のコロニー》の指導者
カザハナ精霊
アイシャマリスのパートナー
デプイマリスのパートナー
マリス覇王を目指す者
マルマリスの父
ツワコマリスの母

 

 Chapter 7 復活する者

先頭に戻る